第3回 小林 雅氏 – 法政大学MBAとの共同講座 2006/9/1 (1)
2016-05-14パートナー
小林 雅 氏
東京大学工学部卒業。 アーサー・D・リトル(ジャパン)を経て、2001年6月エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)に入社。2004年7月同社パートナーに就任。 現在、累計約330億円のベンチャーキャピタルファンドを運用。 インターネットサービス、ソフトウェア、環境関連を中心に投資を行い、数社の社外取締役を兼任。投資先としてアクシスソフト、インタースコープ、グリー、バーチャレクス、リサイクルワンなどがある。New Industry Leaders Summit の主宰などインターネット業界の発展に注力。
イノベーション ~ベンチャーキャピタリストの視点~
こんばんは、小林です。よろしくおねがいします。
今回のプレゼンテーションではまず、私の経歴の説明を致します。
次にベンチャーキャピタルのビジネスモデルと、 ベンチャーキャピタリストの仕事についてお話させていただきます。 そして、最後に投資の際の判断基準についてお話致します。
そこで、そのときすごく自分を認めたくなったんです。
でも私は大学3年間全然勉強してこなかった。こんな私が急に仕事に本気になったからといって、ほとんど職はないだろうなということはすぐにわかった。
私はグロービスキャピタルパートナーズという独立系のベンチャーキャピタルで投資の意志決定に関与していく パートナーを務めています。ベンチャーキャピタリストになった理由は、 大学時代にお世話になった方がベンチャーキャピタルの産業の 研究をされていらっしゃいたからです。
例を出せば、シリコンバレーと日本の ベンチャーキャピタルの比較を研究していました。
そこからベンチャーキャピタリストに興味を持ちました。 しかし、調べてみますとベンチャーキャピタリストというのは、
起業家で成功してマネジメントを経験していた マーケティング責任者の経験者などが多かったんですね。
さすがにいきなりなることは出来ないと思いました。
そこで、エンジニアになるよりもマネジメントという軸でいこうと考え、 アーサー・D・リトルというコンサルティング会社に入りました。アーサー・D・リトルには3年ほどいまして、最後の1年に、 あるインキュベーション施設のコンサルティング、インキュベーション事業を立ち上げるなど インキュベーション先の支援を代行するといったことを1年やっていました。
とにかく面白かったのですが、コンサルティングプロジェクトは1年間で 予算的な問題があって終わってしまうんです。
今後は大企業向けのコンサルティングを続けるか、 留学するか、転職するかなど様々な選択肢を考えていたのですが
グロービスキャピタルパートナーズのセミナーに参加した際に たまたま人材募集をしていたことを知り、現在に至っています。
ベンチャーキャピタルのビジネスモデルについて
ベンチャーキャピタルのビジネスモデルは、 仮にファンドが200億円あるとしますと 運営手数料を大体2%~2・5%の間でもらいます。 そして大体2%ならば年間4億円という形の売上高が 必ず保障されているというビジネスです。
さらにファンドが200億円から例えば2倍になったとします。
するとキャピタルゲインが200億円出ますのでそのうちの20%が 成功報酬手数料ときて40億となります。
40億をそのときのスタッフで配分するという仕事で 非常にアップサイドがある仕事ということになります。
私どもの会社の方針としてはどんな投資をしているのかいいますと、 日本の典型的なベンチャーキャピタルファンドは小口分散投資と呼ばれる形です。
これはリスクを分散させて手当たりしだいに投資をしていくという形です。
この場合、あまりリターンは高くならないということになりますので 我々は、投資先を絞って手厚いサポートをさせていただくことで リターンを高めていくというモデルを採用しています。
ですから、私の担当する企業数というのは5社ぐらいです。
具体的な担当投資先は、 GREE、リサイクルワン、インタースコープなどですね。
ベンチャーキャピタリストの仕事について
次に、ベンチャーキャピタリストの仕事について説明させていただきます。
基本的に投資の仕事ですので、いい会社を見つけてくる事が重要で、 どのような業界が伸びるのか、リサーチをしていきます。
リサーチにあたってニュースやブログを読むことは、 どなたでも行っていることなのですが、 実は、自身のブランディング、ネットワーキングを広げることも 重要になってきます。
といいますのも、公開企業であればこの会社が面白いと思いましたら、 どなたでも株が買えるんですね。 ところが未公開株式の場合、第三者割り当て投資というものがあります。
これは会社が選んだ投資家としか割り当てることしかできません。
そこにいかに食い込んでいくかということがポイントになっていきます。 つまり、グロービスキャピタルパートナーズや小林を覚えていただく、 この会社と仕事をするとメリットがありますよ、 ということをブランディングするということです。
ネットワーキングにつきましては、 例えば平石さんと今回のセミナーのように、色々お話をさせていただいて、 小林とだったら一緒にやりたいよねと思っていただけると、 そこから色々な方々に紹介していただくという感じで ネットワーク作りをしていくということです。
そして、様々な投資に至っていきます。
また、経営者が集う交流会に参加しますと非常に参考になります。
例えばニュー・インダストリー・リーダーズサミットという、 経営者が集うカンファレンスがあるのですが、 ここでお会いした経営者の方に 食事をご一緒しながらヒアリングをしていきます。
どのような企画が行われるのかというのだけでも 結構頭を使わなければならないので、徹底的に勉強をしますし、
業界最先端の生の情報が入ってきます。 それらを参考にさせていただいて投資や企画に役立てていますね。
あとはネットエイジのアジア2006というのがあります。
こういったイベントも中国・韓国のインターネットの状況を調べていきますと、 日本だけではなくて、中国・韓国・アメリカ含めてインターネットという情報、 web2.0の最新の情報が頭に入ってきます。
これは投資の深い判断や戦略のアドバイスするにあたっても 非常に有意義な情報になっています。 こういったイベントに参加しますと、 単純にプレゼンを聞かせていただくというだけでなく、 ネットワーキングの機会にもなりますしね。
投資の際の判断基準
投資の際に何を見るのかといいますと、大まかに2点を重視いたします。
1点目は対象市場の成長性希望観、つまり、市場で一番になりうる選択肢が入っているかどうか、 ということです。
2点目はチームとして優れた企業であるか。
野心的なビジョンをもっていて、 かつチームとして優秀でエネルギッシュかどうか。
後者について説明させていただきますと、 例えば、インターネットサービスでナンバーワン企業になる、
というようなビジョンを持っている会社は強いですね。
あと燃える組織かどうかというが非常に重要です。
これはどういった風に見ているのかと申しますと、 例えば燃える組織かどうかというのは、 オフィスに行けばわかります。
暗い会社は雰囲気が暗いですし、 笑顔がある、とか働いてて楽しそう、挨拶がないなどの点も見ています。
グリー株式会社のケースでは、事業部三人で苦しい時期があったのですが、 なぜ投資したのかといいますと、チームが非常に優秀だったんです。田中さんをはじめ、山岸さんはC-net時代にIT系メディアで 非常に実績を残していらっしゃいまして、 CTOの藤本さんはPHPという言語のカリスマ的な存在なんですが、 26歳でこのような優秀な方がいらっしゃるのかという感じで、非常に落ち着いてビジネスをよく理解しているような方でした。
このような優秀な方たちが集まってくる理由は、 会社にいる方が非常に魅力的で、かつ明確なビジョンを持っていたということです。
革新的なインターネットサービスを作るんだというような、そういったビジョンを掲げて、優秀な人が集まる文化を創っていくという素質をこの会社は元々持っていました。