第6回 江幡 哲也氏 – 法政大学MBAとの共同講座 2006/10/23 (2)

リクルートの環境

平石:
よく世の中でリクルート出身の起業家や経営者が多い、 という話を聞くんですけども、 実際に僕の周りにも本当に結構リクルートの方多いんですよね。その江幡さんからリクルートでの経験、 というお話をして頂きましたが、個別に質問を頂いていますので、最初はリクルートの話から入りたいと思います。 まず、「リクルートに入って良かったこと」。 このことに関してはいかがでしょうか。

江幡:

写真:江幡 哲也 氏

おふくろですかね。例えばよく、無理はするなとよく言われるんですよ。 無理は続かないから無理はするな、とかですね。急成長するな、と。 急成長したものは必ずすぐ落ちると。 そういうことは何度も何度も口をすっぱくして言われましたね

平石:
やはり、リクルートの方というのは、起業志向の強い方が多いのでしょうか。

江幡:
別にそうとは限りませんね。

平石:
江幡さんの同期の中ではどのようなタイプの方が多かったんですか?

江幡:
私の同期だけに限ったことではなく、話は少し飛びますが、 リクルートは企業の採用のお手伝いをしますよね。 性格判断テストとか、 皆様が就職するときによく受けられるSPIとか。
あれはリクルートの商品なんですけど、 元々は自社で採用するために作ったものなんですよ。リクルートに合った人を採用するために。

要はですね、 目標を設定されても絶対乗り越えられる人ばかり入ってくるわけです。

平石:
それでは、刺激を受けられる環境だったというのが、最も良かったんですね。

結果的にオールアバウトの創業メンバーの方も、全員リクルート出身だったのでしょうか?

江幡:
そうですね、最初は社内のプロジェクトでしたから。ただいま社内は150人いて、リクルート出身者12、3人なので、その後は増えていませんね。

リクルートで得たもの

平石:
それではもう少し具体的に伺います。

「リクルート時代の経験は創業時やその後の会社経営に、どのように役に立ちましたか。具体的なエピソードがありましたら、教えてください」。これはいかがでしょうか?

江幡:
営業でしょうね、やはり。営業のスキルが大きいです。

こういった点に関して、野村證券とリクルートは一番すごいでしょうね。
考える前に動くという点は徹底的に叩き込まれました。

平石:
江幡さんは凄い戦略家で、ものすごく考えるイメージが僕の中であります。

それはリクルートの特訓でうまくブレンドされているんでしょうか?

江幡:
そうですね。さっきお話ししましたように僕は最初エンジニアで、今はちょっとあるんですけれども、僕のころにエンジニアが営業に行くって言うのはほとんど無かったんです。

三年目で営業を初めてやったんですが、二年間で地獄の特訓を受けている同期がいる部署に行ったとき、営業マンとして恐ろしいほどの差がありました。

そこで必死になって営業の特訓を短期間で自分に叩き込んだのと、エンジニアだったり、新しい事業を立ち上げてきたっていう経験もありました。

それを+αできたというのが強みにつながったと思いますね。

起業に必要な要素

平石:
一般論的な質問なので答えにくいと思うんですけども、「起業するのに必要な要素は何でしょうか」。
起業のパターンも人それぞれなので起業するのに必要な能力、才能、資質って言われても、僕も質問されたら答えるのが難しいな、と思うんですけども、江幡さんはどう答えられますか。
江幡:
そうですね、まあ平石さんおっしゃたように、それはやる事業によって異なることだと思います。
しかし強いて挙げれば、非常に面白くない答えだと思うんですが、体力が大事ですね。
平石:
そういう意味で若いうちにやったほうがいいということですね。

江幡:

写真:江幡 哲也 氏

それは確率的には若いうちのほうが絶対いいでしょうね。 そこがまずないといけない。僕今41歳になりまして、 多分昔ほど体力はないと思うんですが、やはりそこは課題だと思います。従いまして、まずひとつ、 体力は絶対要素。あと、繊細さと図太さを兼ね備えていること。全部繊細だと疲れちゃいますからね。 両方が必要だと思います。知り合いの社長さんを見てて、 そういう傾向はありますし、私もそう思います。プレーヤーとしても絶対負けないような資質はありつつも、 非常にざくっと色々なことを判断したり、 結論を出したりすることもできるなどの、両方が必要ですね。

平石:
もう一個ぐらい挙げると、どうなりますか。

江幡:
あとは、一人でやる事業でない限りは絶対に人と一緒にやるから、「ぶれないこと」ですね。信念というか、
それしか信頼を得る方法はないので。最初に深く考えて、これだと思う根幹、軸を見つけるんですよ。
別に表層的なことは別に努力して対応すればいいんですけど、変わらない軸。なんのために私はやっているのか、というときに、「このためにやっているんだ」と。
それでは、それって何のためにやってるんだっけ、という具合に目的の目的展開ということを社内で言っています。
行きつくところは常に一定であるということは、非常に重要だと思います。それを言えること。
それは社長の仕事だと思います。

起業に必要な要素

平石:
会社のIPO以前とIPO以後の変化について伺いたいです。
これはいかがでしょうか。
江幡:
そうですね。ちょどIPOして1年と2ヶ月たちます。
採用に関して申しますと、今うちは150人の社員なんですけど、今からさかのぼって1年半ぐらいの間に、70人ぐらい採用してるんです。
平石:
ほぼ倍になったんですね。

江幡:
その間にIPOを挟んでいるんですけど、やはり入ってくる人の質が変わりました。

平石:
どんなふうに変わったんですか。

江幡:
一般的に言う、賢い人が増えましたね。

平石:
よくみなさんそうおっしゃいますよね。

江幡:
それがいいかどうかはまた難しいところですね。
バイタリティがなければ意味がないので。いずれにせよ入ってくる人の質が変わったというのが、変わった点の一つですかね。
平石:
それでは江幡さんの仕事の内容と、入社される方の質が変わったということですね。

江幡:
そうですね。確かにそういう面もありますが、株式公開日ですら夜に営業部の人間と少し飲みをやって、
2時間ぐらいでお開きにしたらそのあと席に戻って、みんな仕事をしていました。そういう仕事に対する点ではあまり変わっていませんね。

今後のビジョン

平石:
個人では建築家になられると、先ほどおっしゃっていましたけども、会社としてのビジョンは、今後どのようなことをお考えなのでしょうか。

江幡:
こういうことはよく聞かれるんですけど、今ここまできたら許せるな、という社長としてのレベルを頂上だとしたらまだ1合目ぐらいなので、今後を語れる資格はまだないですね。

平石:
じゃあ当初考えていたことが、1合目だとかそういうことですね。

江幡:
そうですね、本当にまだまだです。

ですから今うちのやっているメディアを強化する方向と、ビジネスの展開といくつか方向があるんですけど、とにかくまずそれを有限実行で形にすることだと思いますね。

ただ、今までの時間軸と違うのが、今までは、社長が一人で決めて一人で指示してきてやってきたんですけど、ここからのステージは多分組織でやっていく時期ですね。

ここは唯一違うところです。

だからやろうとしているビジョンなどというのは、今決めていることをやるってことでしかないんですけど、やり方にはこだわりたいですよね。