昨日のエントリーでも書いたとおり、今日は2010年下半期のスタートであり、僕にとっては47歳の第二四半期の初日でもある。
その7月1日は、僕にとって記念すべき日となった。
TwitterやFacebook等でも多数の批判や意見交換が行われており、ご存知の方も多いと思うが、「日本証券業協会」が「亡国の規制」とも言うべき、「『個人から出資』を受けた企業は、原則として、上場できない」という、理解不能な規制(改正案)を本年7月20日より導入すると発表した。
その改正案に対する「パブリックコメント」を募集する(締め切り:本年7月1日17時)とのことで、自分自身の「個人投資家からの資金調達」経験および自分が「個人投資家として活動している」事実を踏まえて、同協会が、いかにベンチャー企業の実態を理解しておらず、今回の改正案の導入はベンチャー企業の成長を損ない、更には、日本経済の活性化を阻害することに繋がるかを、3時間以上の時間を投下し、生まれて初めての「パブリックコメント」としてまとめ、本日13時49分57秒(JST)、電子メールにて、同協会総務部宛に送付した。
同協会のウェブサイトを見ると、寄せられたパブリックコメントは「規則改正実施後、応募者名を記載の上、参考意見として公表することを予定しております」とのことなので、僕が送ったパブリックコメントも公表していただけるのだろうが、僕のブログを読んで下さっている皆さんにもベンチャー企業の実態をご理解いただくために、僕が送ったパブリックコメントの内容を紹介しておこう。
※僕が送ったパブリックコメントの内容:
僕は2000年3月、株式会社インタースコープ(現ヤフーバリューインサイト株式会社)という、インターネットを活用した市場調査(インターネットリサーチ)を行うベンチャー企業を創業した際、ベンチャーキャピタル(以下VC)からの資金調達の前、同年5月に、30数人の個人(創業者の親類縁者および友人知人等)から5,450万円の資金を調達しました。
インタースコープは、新興市場に対する株式公開を目指し、先行投資を前提とするビジネスモデルと事業計画で創業しましたが、創業直後にネットバブルが崩壊し、VCからの資金調達ができるかどうか不透明な環境にありました。
実際には、幸いにも同年8月、VCから1億500万円の資金調達に成功しましたが、もし、その当時、個人からの資金調達がなされていなかった場合、インタースコープは資金がショートし倒産もしくは大幅な事業計画の変更を余儀なくされ、その後の成長性に疑問が発生し、VCからの資金調達ができなかった可能性があります。
その後、インタースコープは紆余曲折がありながらも大きく成長し、ある時期から検査法人とも契約し、主幹事証券も決まり、上場申請の準備を進めていましたが、上場後の成長戦略が盤石でなかったため、経営陣での議論の結果、上場は断念し、2007年2月にヤフー株式会社に売却しました。
尚、インタースコープはその時点で、インターネットリサーチ業界の「御三家(3強)」の一角に数えられる企業へと成長していましたが、最初の「エンジェルラウンド(個人による投資)」がなければ、そこまで行き着いていなかった可能性が大きいと言わざるを得ません。
また、僕が創業に参画した株式会社ウェブクルーは2004年9月、東証マザーズに株式公開を果たしましたが、VCおよび事業会社からの資金調達前に、やはり、個人からの資金調達を行いました。
「個人による投資」がその後の「成長」を実現し、「株式公開」に至った成功事例としては、元カカクコムの穐田誉輝さんによる「クックパッド株式会社」への投資は記憶に新しく、2009年11月18日付けの日経新聞にて、そのことが報じられています(その記事で、僕自身もエンジェル投資家として紹介されました)。
因みに、各個人と当該企業との関係が確認できなかったため、パブリックコメントでは実名を挙げることは控えましたが、新興市場へ上場したベンチャー企業で、当該企業の「従業員『以外』の個人」から資金調達を行った企業は数多く存在しています。
そのことは、各社の「目論見書」を見れば、すぐに分かります。
これは僕の個人的ブログなので、僕の知る限りにおいて、上記に該当するベンチャー企業を挙げると:
マクロミル(東証マザーズ上場後、東証一部に移籍上場)
オプト(日本証券業協会が運営するJASDAQ市場に上場)
DeNA(東証マザーズ上場後、東証一部に移籍上場)
ネットエイジグループ(現ngi group/東証マザーズ上場)
GDH(東証マザーズ上場)
一休(東証マザーズ上場)
等があり、「個人による投資」の「有用性」は論じるまでもなく、今回の改正案は「リスクマネーの循環」を滞らせることになり、日本経済の活性化に「逆行」するのは確実です。
また、僕はウェブクルーおよびインタースコープの株式売却益を元手に、未公開ベンチャー企業へのエンジェル投資(個人での投資)を行っていますが、今回の改正案が施行された場合、投資資金回収の道が閉ざされることを意味し、そのような活動を継続することに大きな支障を来すことになります。
尚、今回の改正案は、未公開株に関する詐欺が横行していることに端を発し、それを防ぐ「手段(解決策)」として考案されたと説明されていますが、そのために未公開ベンチャー企業の個人からの資金調達を制限することは、「野球賭博」が問題なので「プロ野球を廃止する」といった理屈と同じであり、問題の定義とその解決策に大きな不整合があります。
ドラッガーの言う、「間違った問題への正しい答えほど、始末におえないものはない」という言葉そのものです。
未公開株に関する詐欺が横行しているのであれば、それを「防ぐ策」や「取り締まり強化」に知恵を絞るべきであり、今回の改正案は、あまりに怠惰な策としか言いようがありません。
また、今回の改正案では、原則として、「未上場会社が上場前に個人投資家を対象に勧誘行為を行っていた場合には上場できないことを明らかにする」と詠っていますが、例外として、「有価証券届出書」あるいは「有価証券報告書」を提出している場合は除くとしています。
しかし、このような書類を、創業間もないベンチャー企業が自力で作成するのは非現実的であり、まさしく、事実上、上場させないという規制になるわけです。
実は、インタースコープでは創業から1年以内に50名未満から計1億円超の資金調達を行ったため、当時の金融商品取引法で定められていた「有価証券通知書(同報告書だったかもしれません)」を提出しました。
「有価証券通知書」は「同報告書」と較べれば簡単な書類ではありますが、創業間もないベンチャー企業にその方面に明るい人材がいる由もなく、知り合いの伝手を手繰り教えを請い、その書類の作成に多大な労力と時間を要し、事業の推進にとって大きな負担となったことは、今でもよく憶えています。
以上のような実体験に基づく見解から、本改正案は、ベンチャー企業の対応力に対する理解がないと言わざるを得ず、個人からの資金調達を阻害することに繋がるのは勿論、ますます起業意欲の減退を招き、我が国の経済に大きなダメージを与えることは必至です。
このような事務手続きを簡素化することがベンチャー企業の成長、そして、日本経済の活性化にとって非常に重要であり、本改正案は「証券取引法等の一部を改正する法律(平成16年法律第97号)」が同年12月1日に一部施行されたことに伴い「有価証券の募集または売り出しに係る用件の緩和」がなされたことに逆行するものです。
上記のような理由により、本改正案には断固、反対します!!
さて、皆さんは、どう思われたでしょうか?
補足:同様な趣旨のブログを、インフォテリアの平野さんが書かれています。とても分かりやすく解説されていますので、是非、ご一読いただければと思います。