僕が「日本人と外国人」の「共同創業者マッチングプログラム」を始める理由(その2)。

ロンドンとニューヨークにオフィスを構える Defiance Capital という個性的なVC (Venture Capital)がある。

久しぶりに彼らのウェブサイトを訪ねてみると、どうやら「Pivot」したようで、Home Page だけになっており、Early stage investor in AI-driven enterprise innovation. というコピーと、More Coming Soon というクリックボタンがあるだけだった。

NO of Unicorns by year

彼らが2024年4月、「The Unicorn Founder DNA Report」というレポートを発行した。

2013年から2023年にかけて「Unicorn(ユニコーン)」になった全スタートアップ創業者の「バックグラウンド」を調査したものだ。とても興味深い内容である。

そのレポートによると、その10年間に「972社のユニコーン」が誕生し、その創業に参画した創業者は「2,467人」いるという。

&2%_Immigrant Founder

興味深いのは、創業者たちのバックグラウンドだ。

例えば、その間に「米国」で生まれたユニコーンの「62%」が少なくてもひとり以上、「移民および移民二世」の創業者がいる。また、半数のユニコーンには、米国TOP10の大学出身者、シリアルアントレプレナー、STEM系学位保持者がいる。

ひと言で言えば、米国以外の出身者、高学歴の理数系創業者、シリアルアントレプレナーが欠かせないということだ。

Ethnicity

さらに詳しく見ていくと、米国生まれのユニコーンの「34%」は、最低1人以上「アジア系の創業者」がいる。また、「白人以外の創業者」がいるユニコーンが「38%」。創業者全員が白人以外というユニコーンが「17%」。

ヨーロッパ生まれのユニコーンは、米国生まれのユニコーンと比較して、「移民」「アジア系」「白人以外」「創業者全員が白人以外」のスコアがすべて低い結果になっている。

地理的な要因もあるだろうが、ここから何が言えるだろうか?

明確に「因果関係」とまでは言い切れないかもしれないが、「多様性」は「イノベーション」を起こすための「キー(重要な要素)」だということだ。

そして、「単一民族国家の日本からユニコーンが生まれにくいことの合点がいく。

そういうと、スモールキャップ(小さい時価総額)で上場できる株式市場があるせいだという指摘があるかもしれないが、1,400-1,500億円以上の時価総額(日本円の感覚では、1,000億円以上でもいいだろう)を有する上場スタートアップを入れても、人口やGDP比で見ると、アメリカとの比較は論外としても、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、韓国等と比較しても、日本生まれのユニコーンは少ない事実は否定できない(下図参照)。

Overview of the World startup Landscape
ChatGPT Deep Research 等をもとに筆者作成。

インドや中国のように膨大な国内市場があるなら、いいかもしれない。

でも、2024年の出生数が「70万人」を下回ったわけで、このまま「人口が減っていく国」に閉じていていいわけがない。

必ずしも「Made in Japan」である必要はないが、どうすれば「日本人の才能」を解き放つことができるのか? そのことを真剣に考える必要がある。

僕の知り合いの外国人(主にアメリカ人やヨーロッパ人)は皆、口を揃えて、日本人は「Engineering, Machine Learning, Conputer Vision」等において優れた能力を持っている(人が多い)にも関わらず、どうして、グローバルに成功するスタートアップを生み出せないのか? という。

これだけグローバル化し、多様性が求められる世界になった今、日本人の強みを活かし、弱みを保管するためにも、多国籍チームを創るこことは理に適っている。

僕が「日本人と外国人」の「共同創業者マッチングプラットフォーム」を立ち上げる理由である。

皆さんはどう思うだろうか?

僕が「日本人と外国人」の「共同創業者マッチングプログラム」を始める理由(その1)。

昨夜は投資先の創業者がパートタイムでママを務める世田谷の住宅街にある「スナック」で、BitValley(ビットバレー)なる時代を共に生きた「池田順一さん」と久しぶりに会った。かれこれ10年ぶりだった。

そのスナックは僕の自宅から自転車で15分もあれば行ける場所にあり、夕食を済ませてから出掛けたのだが、池田さんのお住まいは下町で、なんと今日は朝5時起きでヨットに乗っていたらしく、本当は21時には店を出たかったらしいが、僕が到着したのは21:30頃だった。

2000年前後のネットバブルの狂騒から四半世紀。当時生まれた子供は25歳になっているわけで、時の流れの速さを実感する。「若い人」という言葉は、僕らの世代がいかにも年寄りになったようで好きではないが、20代、30代の起業家にとっては、ビットバレーは「歴史の教科書」でしか聞いたことがなく、「長嶋茂雄さん」をリアルタイムで見たことがないのと同じなのだろう。

ロシアのウクライナ侵攻や米国FRBによる政策金利の引き上げ等により、それまで濁流の如くスタートアップやVCに流れ込んでいたマネーは逆流、多くの「Fake Unicorn」が倒産の憂き目にあう。そこに、OpenAI が「ChatGPT」をローンチし(2022年11月30日)、シリコンバレーでは、VCマネーの「AI による寡占化」が始まった。

グローバルなスタートアップエコシステムや資金の流れから「De-Coupling」されている日本は、良くも悪くも上述の影響は限定的だったが、2022年に「約1兆円 (9,889億円), Source: Japan Startup Finance by スピーダ」と過去最高額を記録したはスタートアップへの投資額は、2024年には「約7,793億円」と、約8割に落ち込んだ。

それでも、僕らがネットビジネスを始めた2000年頃のスタートアップへの投資額(恐らく1,000億円程度)と較べたら、8倍近くに大きく成長している。

しかし、解決されていない大きな問題が2つある。ひとつは、未だに「ドメスティック」なこと。もうひとつは、それと大きく関連するが、「グローバルに成功したと言われるスタートアップ」が輩出されていないことだ。

その理由は何だろうか? もちろん様々な理由があるが、僕は大きく、6つの阻害要因があると思う。

SONY, Honda, TOYOTA, Panasonic等の日本企業が世界に出ていったのは、第二次世界大戦後の1950年代から1960年代。当時は、世界中の誰もが「物質的な豊かさ」を求めており、クルマ、テレビ、冷蔵庫、エアコンといったハードウエアは世界共通のニーズだった。

尚且つ、それらは「目に見えるし、試乗したり、手にとって」確認することができた。

でも、ソフトウエアは目に見えないし、ましてや、SNSに関しては、異なる価値観やカルチャーを理解できなければ、海外市場で受け入れられる商品やサービスは作れないだろう。

残念ながらユニコーンになるも倒産してしまったが、僕は「Infarm」というベルリン発のVeritcal Farming スタートアップ (LED/水耕栽培で屋内で野菜を生産) に投資し、日本法人を設立して、足掛け5年ほど経営していた。

Infarm は全盛期(という言い方は悲しいが)、日本を入れて11ヵ国で事業を行っており、1,000人以上の従業員がいたが(い過ぎである。今だから言えるが、正直、経営効率が悪過ぎた)、50-60ヵ国籍で構成されていた。

また、日本法人の経営者だった僕は、四半期に一度の「幹部会議」に招集されていたが、毎回、20人程度の人間が参加しており、その国籍は10ヵ国籍だった。

創業者は全員、イスラエル出身。つまり、ユダヤ人だが、ベルリン(ドイツ)で創業。尚且つ、アラブ系の人間もいた。ドイツ発祥のスタートアップにも関わらず、ドイツ人は2割程度、英語がネイティブな人も約2割。でも、公用語は英語。極めてグローバル化されており、多様性に富む組織だった。

そのような組織を身を以て経験すると、創業者は全員、日本人、従業員も全員、日本人、株主も日本人のエンジェル投資家やVC、顧客も日本人と日本企業という日本のスタートアップを見ると、子供の頃の「白黒テレビ」を思い出す。

それにも関わらず、現時点ではまだ1億2,000万人の人口を擁し、世界第4位のGDPの市場があり、日本国内で充分、成長できる。日本語でビジネスができるし、そんな楽なことはない。でも、成長した時には「日本市場に過度に最適化」されており、そこからグローバル化しようとしても極めて困難だろう。ましてや、30-50億円で上場できる株式市場があり、わざわざリスクを負って海外市場に挑戦する必要はない。

しかし、皆さん、ご存じのとおり、2024年の出生数は「70万人」を割った。日本のGDPに占める「輸出比率」は約17-18%。つまり、内需中心の経済であり、人口減少はイコール、GDP=市場の減少である。

単一民族国家の日本では、仮に「TOEIC」が800点以上だったとしても、日常の仕事で接する人は殆ど日本人という人が大半だろう。それでは、英語が話せるようにはならないし、発想の枠も限られるだろう。

いまや、スマートフォンで「40億人」がインターネットを通じて繋がっている時代である。

日本人だけでビジネスをしていても、グローバルな事業を創造することは極めて困難だと思う。

それが僕が「日本人と外国人」の「共同創業者マッチングプラットフォーム」を構築しようと思った理由である。

また、これは結果論というか、偶然なのだが、僕の「共同創業者」はシンガポール在住のイギリス人である。

まずは、自分で実践しないと説得力が無いからねw。

グローバルに挑戦したい人は是非、GoGlobal Catalyst: Co-Founder Matching Program に応募して欲しい!

シンガポールに会社を設立(することに)した。

石川遼選手(プロゴルファー)が、米ツアーに再度、挑戦することを決めた。12月に行われるPGAツアーの予選会に出るらしい。

33歳。プロゴルファーとして若いとは言えないが、彼の場合、5年間、アメリカでPGAツアーに挑戦していた経験値もあり、まだギリギリ、アメリカのPGAツアーに再挑戦できる年齢だろう。素人の僕には分からないが、世界トップレベルの選手たちと戦えるよう、スイングをゼロリセットし、1から作り直してきたという。

実はこのブログは昨年12月に途中まで書いたままになっていた。なので、「予選会に出るらしい」となっている。結果は残念ながら、予選会を突破できず、今期のPGAツアー再挑戦はならなかった

でも、彼は諦めないだろう。応援したい。

「することに」をカッコで括ったのは、上述のとおり、12月に途中まで書いていたから。せっかくなので、事の経緯を憶えておくためにも、そのまま残しておくことにした。

2025年1月7日。僕にとって10社目となる新しい会社「GoGlobal Catalyst Pte. Ltd.」をシンガポールに設立した。外国に会社を設立するのも初めてだし、共同創業者が外国人なのも初めてだ。

GoGlobal Catalyst (GGC) の目的は、日本人が共同創業者のひとりとして、日本人以外(外国人)と一緒にグローバル市場に挑戦するスタートアップを輩出すること、そして、自分たちもスタートアップとしてグローバルなビジネスを立ち上げることだ。

結果的に僕の共同創業者は「イギリス人」で、極めて国際的で多様性に富むチームになった。自分たちのビジョンを、まずは自分たちで体現することが大切だ。

ここから先は、つい先程、Substackというシリコンバレー発のニュースレター発行プラットフォームで発行した最新のニュースレターの日本語訳(内容は微妙に変えている)を紹介したい。

僕の新しいチャレンジの「物理的」なスタートは2023年6月9日(金)、東京は三鷹市にあるCo-Working Spaceで始まった。その場所の名前はMusashino Valleyで、僕も出資者の一人。

この場所は、スタートアップではなく、ビジョンや計画はあるものの、次のステップを踏み出すことに「尻込み」している一般の人々のためのコミュニティ。

当日は、観客の前で「自分の次のステップ」を宣言することを目的とした、最初のミートアップが開催された。そうすることで、後戻りできない状況に身を置くためだ。

ご想像の通り、僕もその中の一人だった。

そもそもは、2011年8月にサンブリッジグループがシリコンバレーのPlug and Play Tech Center(現Plug and Play)で開催したイベントに遡る。

日本から連れて行ったスタートアップの英語でのピッチ(プレゼン)を聞いて、なれない英語で頑張っているな!と感銘を受けた。

でも、次の瞬間、戦後の焼け野原の「1ドル360円」の時代に、片道切符で米国市場に乗り込んだソニーやホンダなどの創業者や初期の社員の方々の苦労に較べたら、僕たちはあまりにも恵まれており、僕たちの努力は鼻くそ以下だと思った。

そして、日本の将来のために自分に何ができるか?を考えた。

日本は、世界第3位(当時)の経済大国に上り詰めたとはいえ、GDPの2倍もの公的債務を抱えており、このまま何もせずに死んでしまったら、子供たちにツケを残して「無銭飲食」でこの世を去ってしまうようなものだと考えた。

僕は数学が苦手で、コードも書けない。今から政治家にはなれないし、なれたとしても、大したことはできない。でも、僕はいくつかのスタートアップを共同創業し、そのうちの1社は株式公開を果たし、もう1社はヤフー・ジャパンに売却した。また、ドリームビジョンでは痛い失敗を経験した

海外に住んだことは一度もないけど、それなりに英語も話せるし、外国人の友人もたくさんいる。そこで、僕は残りの人生を日本のスタートアップエコシステムのグローバル化にコミットすることにした!

あれから、13年と5ヶ月になる。

2024年7月Dan Brassingtonと僕は、東京のお気に入りのラウンジでソファに座っていた。僕は彼に、残りの人生について考えていることを相談した。

彼は「それは問題じゃないよ。Ikuoのマインドセット次第だ。先延ばしにするのは、止めた方がいい。1か月間、時間をあげるから、結論を出しなよ」と言った。

僕は「1か月とは随分と長いね。なぜそんなに長い時間をくれるのか?」と訊いた。

すると彼は「あまり追い詰めるのは良くないと思ってさ・・・w」と答えた。

僕は彼に「分かった。じゃあ、2週間くれ。」と返事をした。

7月13日(金)。彼がシンガポールに帰る前日、再びソファに座り、僕は「決めたよ。やることにした!」と言うと、彼は「じゃあオレも一緒にやるよ!」と返してきた。

これがGoGlobal Catalystの「精神的なスタート」だった。

僕は現在、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(通称:武蔵野EMC=Entrepreneurship Musashino Campus)の教授として学生を指導している。学生たちには「見込み顧客」へのインタビューが大切だと言っているが、そういう僕は、あまりそういうことをしたことがない。

でも、ピッチデックを作成し、ここ数ヶ月、毎日のように投資家やビジネスパートナー候補の方々へのプレゼンを行っている。学生たちに言っていることを自分でも実践しているということだ。

その結果、なるほど・・・日本の大企業は、こういう問題意識があるんだなとか、組織とはこういう意思決定のメカニズムになっているんだなとか、様々なことを学ぶことができた。

起業家に必要な要素として、「根拠のない自信」を挙げることが多々ある。僕自身、今回の挑戦に関しては、確たる根拠があるわけじゃないけど、絶対に上手くいく!と確信している。でも同時に、言語化はできていなかったけど、このまま(最初のプランのまま)では上手くいかないとも思っていた。

ようやく最近になって、顧客のニーズや問題意識、需要はどこにあるのか、自分たちをどう位置づけるべきか? が分かってきた。

もちろん、そう簡単には問屋は卸してはくれず、幾多の試練が待っているだろう。でも、前に進めると思う。

3月か4月には、GoGlobal Catalyst としての事業構想に関して、プレスリリースを出したいと思っている。いや出せるように頑張る!!

まずは、1/31 (金)、渋谷サクラステージにオープンする最新のCo-Working 兼 Event Spaceで実施するEMC Global Summit の前夜祭で、GoGlobal Catalyst の事業構想について話をする予定だ。

また、その翌日2/1 (土)に開催するEMC Global Summitでは、海外から招聘する学生起業家や大学関係者、ベンチャーキャピタリストの方々と、日本を含めたアジアのスタートアップエコシステムを盛り上げていくにはどうするべきか?について、僕がファシリテート(会話は英語)することになっている。

皆さん、是非、ご参加下さい!!!

還暦少年とMidjourney.

子供の頃、母親とスーパーに行くと、偶然に出くわした彼女の知り合いとの会話で30分は待たされた。でも、当時の僕には長く感じられただけで、実際には5-10分くらいだったかもしれない。近所のスーパーに買物に行った時、二組の家族連れがいて、お母さん同士が楽しそうに会話をしている光景が目に留まり、産みの母のことを思い出した。

会社を解散するのは思ったよりも大変だった。過去形で書いたが、実はまだ終わっていない。今年4月30日付けで、Infarm 日本法人の解散登記をし、法的概念として、会社は解散されている。つまり、Infarmとして、日本で事業を行う主体は存在していない。但し、財務的に整理をするための「清算」という手続きを行う必要があり、まだその手続きが続いている。でも、その手続きの殆どは弁護士と税理士の方々が中心となって進めてくれており、HQ側とのやり取りは必要だが、僕が清算手続きの実務を行っているわけではない。

そんなことで、ここ数ヶ月、時間の自由ができたので、The Economist、Wall Street を購読し、Crunchbase等を含めて、可能な限り、海外のメディアを読むようにしている。下図はの今朝 (2023年8月27日 10:15 am JST現在)の時点で、The Economist 購読者に最も読まれた記事TOP5。

それで感じるのは、それらのメディアには、日本のことは殆ど登場しない、ということだ。ここ最近のエコノミストの主な記事は、ウクライナ情勢、プーチン、プリコジン、中国、習近平、アメリカ大統領選、米国経済、地球温暖化等である。今日のニュースレターに珍しく日本の記事があったが、性風俗産業に関する新しい規制に関するものだ。政治でも経済の話でもない。

仕事柄、シリコンバレーに関する記事を意識的に読んでいるが、スタートアップへの投資に急ブレーキが掛かる一方、AIに関しては、バブルの様相を呈していると言っても過言ではない。

但し、AIはスタートアップが取り組める対象ではない。ChatGPTを運営するOpen AI はマイクロソフトから1兆円以上もの投資を受け、対抗馬のひとつ、ディープマインドの共同創設者ムスタファ・スレイマン氏らが2022年に設立した「Inflectin AI」には、Rein Hoffman も出資者に名前を連ね、$1.3B(現在の為替レートで約1,900億円)を調達している。Computing Powerに莫大な費用を必要とし、スタートアップが数億円の資金で始められるビジネスではない。

一方、together.ai というスタートアップが、オープンソースのAI 構築をサポートするプラットフォームとCould サービスをリリースした。

特定のバーティカルに特化したAIサービスの開発が促進され、SaaSならぬ「AI as a Service =AaaS」の時代が来るように思う。

ところで先日、INITIALの「2023上半期 Japan Startup Finance」をもとにしたウェビナーを拝聴した。詳しくは、同社のレポート(無料)をダウンロードしていただきたいが、印象に残ったのは以下の3点。

(ソース:INITAIL)

1つ目は、シリコンバレーに遅れること約1年、日本でも特にレイターステージにおいて、スタートアップへの投資が急減速したこと。2022年上半期は「4,160億円」がスタートアップに投資されていたが、2023年上半期は「3,314億円(前年同期比:約80%)」に減少

2つ目は、資金調達額上位からも評価額ランキングからも、SaaS スタートアップの存在感が薄れてきたこと。

3つ目は、2つ目とセットで語る必要があるが、DeepTech スタートアップが増えてきていること。

要約すれは、ビットバレーから約25年に渡り続いてきた「インターネット」スタートアップ(日本語でいうネットベンチャー)による時代は終わりを迎えているということだ。

スタートアップ=DeepTechスタートアップの時代になるだろう。つまりは、起業家だけでなく、VCをはじめとした投資家を含めて、スタートアップエコシステムを構成する要素が大きく変わっていくだろう。

尚、INITIALのリサーチ対象は「日本のスタートアップの資金調達」であり、そのことには触れていないが、この先、日本のスタートアップおよびスタートアップエコシステムが成長していくには、東証の新興市場(旧マザーズ)に上場することを主要なエグジット(言葉は出口だが、実際はそこからがスタート)とするだけでは、確実に限界が来るだろう。

今のところ、世界第3位のGDP(マーケット)があり、スタートアップというステージであれば充分な成長が可能である。但し、2060年には、日本のGDPは「中国の1/10」になる。いつまでも「国内市場」だけを対象としているなら、スタートアップを語る以前に、日本の存在意義は増々薄れていくのは間違いない。安全保障にも支障を来すはずだ。

最近はそのようなことを口にする人も少なくなってきたが、戦後80年近く経つにも関わらず、未だに実現できていない「Next SONY, Honda」を生み出すにはどうすれば良いか? という「終わっていない宿題」に正面から取り組む必要がある。

僕なりの考えがあるが、またの機会に披瀝するとしよう。

さて、明日(8/27)から、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(通称:武蔵野EMC=Entrepreneurship Musashino Campus)の2年生約30人を連れて、シリコンバレーに行く。主に、僕の投資先のファウンダーや知り合いの起業家、ベンチャーキャピタリストに話をしてもらう予定だ。下の写真は昨年、武蔵野大学EMCとして実施した記念すべき第一回目の模様(投資先のMilesの新オフィスにて)。

僕の記憶が正しければ、サンブリッジ時代から数えて、今年は記念すべき「10回目」のシリコンバレーツアーである

ところで、今回のアイキャッチ画像は、僕がprompt を出し、Midjourney に描いてもらったものだ。生物学的にはだいぶ年を取ってしまったが、気持ちは、EMCの学生(20-21歳)に負けないつもりだ。

おっと、大事なことを忘れるところだった。何年ぶりかでドリームビジョンのウェブサイトをリニューアルした。そして、ブログサイトの「タイトル」と「ドメイン」を新しくした

今後の展開に乞うご期待!

何に資金を投下するべきか?

紀ノ国屋、サミット、コクヨの各店舗からファーミングユニットを撤去してから、そろそろ3ヶ月。Infarm 日本法人を解散し、代表取締役社長を退任してから今月末で1ヶ月になる。法的には「弁済禁止期間中」という期間にあり、まだ「清算会社」としての存在は残っている。

とは言え、実務的には終了しており、次の展開について、毎日、あれこれ思考を巡らせている。

以前に書いたブログでも紹介したが、Precursor Ventures の創業者 Charles Hudson のNews Letter は、これからの人生でやりたいことを考える上で、示唆に富んでいる。

Charles は、Pre-Seed ステージを資金調達額「$1M(¥130/$=1.3億円)」以下と定義しており、Seedステージ、つまり、over $1Mのファイナンスができた投資先と出来なかった投資先では、1ヶ月の「バーンレート(資金燃焼額)」がどう異なるか?を分析している。以下はそのグラフである。

2017年から2022年を比較し、その年にSeedファイナンスをしたスタートアップと、できなかったしたスタートアップを比較したところ、Seedファイナンスが出来た投資先の方が、1ヶ月のバーンレートが高かった。つまり、より資金を使っていたということだ。

ここで注意したいのは、資金をより多く使えば、Seed ファイナンスにたどり着けるという単純な話ではない、ということだ。

データが示していることは、彼が日頃の観察から得ていた感触と合致しているそうだが、Seed ファイナンスに成功した投資先は、Product-Market-Fit(PMF)に至ることができており、自信を持って顧客獲得のための先行投資(先行投資)ができているのだろうと分析している。結果として、Seedファイナンスができなかった投資先よりもバーンレートが増えているということだ。

Pre-Seed スタートアップ創業者の仕事は、投資から調達した資金を使って、PMFを実現するための「Insight(示唆)」を獲得することだ (by Charles)。

当たり前だが、いくら使ったか?ではなく、「何にお金を使ったか?」が重要ということだ。

彼のニュースレターを読んで僕が学んだことは、シード&アーリーステージという、極めて属人的な判断や嗅覚が求められる領域においても「分析(データ化)」と「科学的アプローチ」が必要ということだ。

DreamVision portfolio performance as of 2019

少々振るいデータ(2019年現在)だが、サンブリッジ時代に組成し、ドリームビジョンで引き継いで運営している2つの投資ビークルとドリームビジョンからの直接投資の計28社に関しては、「約8割」が次の資金調達を実現できている。また、生存確率は93%と、自画自賛だが投資パフォーマンスはかなり良い。

問題は、次のラウンドに行けなかった6社は、次のラウンドに進めたスタートアップと何が異なるのか? ということだ。今から当時のデータを確認できるか? は分からないが、出来る範囲で分析してみよう。

僕は約20年以上もの間、インターネット関連業界で仕事をしてきたが、ソースコードは書けないし、エクセルもまったくダメ。でも、嗅覚には自信があることもあり、自分の直観と運の良さに甘えて来たが、これからの人生で僕がやりたいことを実現するには、上述のとおり、「分析」と「科学的アプローチ」が必要だ。

つまり、数値化が得意で、エクセル操作スキルが高く、ちょっとしたコードなら書ける人が必要だ。そして、そこそこ英語ができる必要がある。

そういう人を募集できるように、まずは、ピッチデックを作らないと!