もう30年以上前のことになるが、僕は幼稚園の初日、家が恋しくて泣き出してしまった。
友達が楽しそうに遊んでいる中で、園庭の門のところで、ここから飛び出して家に帰りたいという思いを必死に堪えていたのだが、どうしても、たえきれず、泣き出してしまった。今でもよく覚えている。
いつだったか、インタースコープを一緒に創業した山川さんから、最も古い子供の頃の記憶が、その人の人間性の本質だというような話しを聞いたことがある。
最も古い記憶という意味では、幼稚園に入る前に、母方の親戚と一緒に温泉旅行に行った時のことが、ぼんやりとではあるが記憶に残っている。それは「楽しかった」という記憶である。
幼稚園のことに話しを戻すと、初日に泣き出してしまった僕だが、その後は楽しく通っていた。
ある時、幼稚園の後ろにある川で遊んでいたのだが、幼稚園に戻ると、だいぶ時間が過ぎていたようで、送迎のバスは既に出発していた。それで、仕方なく、友達と2人で歩いて帰ったような想い出がある。たかが裏の川だったが、その時の自分にとっては、「未開の地」に足を踏み入れたような感覚だったことを覚えている。
その一方、ある時期、登園拒否になったこともあった。
特に、幼稚園がおもしろくなかったとか、誰かに苛められていたということではないが、本質的には「内向的な性格」の僕は、祖母に守られた自宅で、緊張感のない、やわらかい、温かい環境で過ごすことが、最も快適だったのだと思う。
起業をした今でも、時々、自分をストレッチしながら何かに挑戦することが辛くなることがあるが、それが、僕の本質なのだろう。
なりたい自分になるのではなく、本来の自分(素材)を活かして、なれる自分になるということが、自分らしく生きるということかもしれない。