新政権と共に始まった2013年。今年はどんな一年になるのだろう?
自分自身の頭の整理と年初の挨拶を兼ねて、僕の問題意識と、その解決に向けた提案を披瀝したい。
昨年12月30日の日経新聞朝刊一面に、ソフトバンク孫さんのインタビュー記事が掲載されていた。
その中で孫さんは「過去の携帯電話は『日本独自の規格』でガラパゴスと呼ばれ、海外勢を排除してきた。その結果、日本企業が海外進出に出遅れてしまった。もう一度、世界で戦う気概を取り戻さなければならない」と答えている。
そして、「経営者の最も重要な仕事はドメイン(事業領域)を『再定義』すること。日本企業は『本業』という言葉が好きだが、市場が縮小するのに既存事業にしがみつく理由は何か。企業理念を軸に、次の戦略を描くのが経営者の役割だ」と言っている。
誰も異論はないハズである。
しかし、どうやら、そこに「異論」を唱える人がいるらしい。
孫さんのインタビュー記事の翌日、同じく日経新聞朝刊一面に、信じられない見出しが踊っていた。
「政府」が「電機メーカーなどの競争力を強化するために、1兆円もの資金を投じ、メーカーの『工場・設備』を買い取る」という。
その理由は「韓国や台湾などの海外勢」と競うためで、過去に投資した資産の減価償却負担が重いと新たな投資を抑える一因となり、競争力の低下を招いた」としているが、その「投資」を決めたのは「誰」だろう?
「経営者」である。
ということは、経営責任は問われない、ということだ。
仮に、ベンチャー企業がベンチャーキャピタル等から資金を調達し、何らかの技術や設備に投資をし、それが失敗した場合、それらを「帳消し」にしてくれないと新しい勝負はできない、と言ったとしたら、どうなるだろう?
そんな会社はさっさと清算し、残余財産を株主に分配してくれとなるだろう。あるいは、経営者は即刻、クビになる。
政府がやろうとしていることは、我々の税金、それも、財政赤字の日本においては、今まだ税金を納めていない僕たちの子供達が、大人になってから稼ぎだすだろう富の先食いである。
僕は小学校1年生の長男に「税金」という仕組みとそれを何に使うかを決める「政治家」という職業を教えているが、彼がこの話を聞いたら、何というだろうか?
この3連休に訊いてみよう。
次に、安倍首相が頻りに主張している「インフレ目標」について。
もう過去何年、いや10年以上にも渡って異常なまでの低金利にしていても経済が反応しないのに、なぜ、これ以上、資金を供給しようというのだろう?
そりゃ、おカネをどんどん刷れば、おカネの「価値」は「目減り」するわけで「円安」になるだろうし、輸出企業にとっては有利である。
でも、それで「実体経済」が良くなる(構造が変わる)わけではない。
いくら資金を供給しても、いくら金利を下げても、経済が活性化しないのは「潜在成長率」が「実質的にマイナス」だからである。
少子高齢化で人口が減り、市場が縮小していくということは、「労働生産性」が劇的に向上しない限り、デフレから脱却することはできない。
そのような状況にも関わらず、今や「衰退産業」と化した「家電産業」を守るために、未来から借金してまで税金を投入する意味はどこにあるのだろう?
むしろ、衰退産業に従事する人々の「成長産業」への移動を促進するような政策を打った方が、どう考えても有効なはずである。
「変化」は必ず「痛み」を伴うわけであり、「目の前の痛み」を恐れて手術をしなければ、時間の問題で死んでいくしかない。
ところで、昨年末、ある新聞の取材を受けた。
「ベンチャー活性化のためには、どのような政策が有効か?」というものだった。
僕は、こう答えた。
設立3年未等、何らかの「条件」は必要だと思うが、仮に、ベンチャー企業に「1億円」を投資したら、同じ「1億円」を「税控除」の対象にする。
2億円の「経常利益」が出た場合、何もしなければ、約1億円を税金として収めることになるが、僕の提案は、1億円をベンチャー企業に投資することによって、1億円の税金を免除する、というもの。
つまり、手元に残る現金は、どちらも「1億円」ということだ。
税金は払ったら戻ってこないが、投資なら「リターン」がある可能性がある。
事実として、シンガポール等では、研究開発に投じた資金の「250%(だったと思うし、国によって数字は異なる)」を税控除する等の政策を実行している。
税金として吸い上げた場合の問題のひとつは、吸い上げた金額をそのまま公共サービスに使うことができない点である。税金を吸い上げるためにも、配分するためにも「コスト」がかかるということだ。
だったら、経済活動をして生まれた「富(余剰資金)」は、政府ではなく、民間で回した方が効率が良い。
もうひとつ、僕が提案したことは、「整理解雇の4要件」の「完全撤廃」か「大幅緩和」である。
電機メーカー(に限らない)が衰退した事業を思い切って捨てて、新しい事業に舵を切れない理由のひとつに、競争力が無くなった「事業を清算(撤退)」するために、そこに従事していた従業員を解雇するには「整理解雇の4要件」を満たす必要がある、ということがある。
これがトンデモないシロモノで、事実上、解雇はできない仕組みになっているのが今の日本である。
僕はお恥ずかしい話、「整理解雇」をしたことがあるので、それがいかに大変なことか、痛いほどよく分かる。
何も「家電」に限った話ではなく、「繊維産業」等、競争力が無くなり、事実上、日本から消滅していった産業はいくらでもある。
何事も「栄枯盛衰」である。
次いでに、ドラッカーの言葉を紹介しよう。彼は「1995年」に出した論文で、こう書いている。
「先進国の中で食糧を大量に輸入しているのは、日本だけである。その日本さえ、食料生産が弱体化したのは必然ではなく、時代遅れの『米作補助』という農業政策が、近代農業の発展を阻んだからだった」。
「日本以外のあらゆる先進国が、都市人口の増加にも関わらず、過剰農産物の生産者となった。それらすべての国で、農業『生産性』は、80年前の数倍になった。アメリカの場合は、8倍から10倍になった。しかも、先進国のすべてで、今や農民は労働人口のせいぜい「5%」に過ぎない。80年前の10分の1である」。
小沢一郎氏が主張した農業の戸別「所得保証」は、どう考えても支持できない。
また、昨日だったか一昨日だったかの日経新聞25面で、ユニクロの柳井さんが「日本の大学」を酷評していたが、僕は全く同感である。
「競争」がない社会・組織・産業は必ず「腐敗」する。
結論として、日本に必要なことは「延命」ではなく「改革」であり、「自助の精神」である。
「スマイルズの自助論」とミルトン・フリードマンの「資本主義と自由」を、ひとりでも多くの人に読んで欲しい。
これだけ「情報技術(I.T.)」と「金融技術」が発達し、グローバル化した世の中で、「ローカル・ルール」という「鎖国」は通用しない。
以上が、僕の問題意識とその解決に向けた提案と主張である。
ところで、今朝、今年最初の大阪出張でホームに降り立ち、エスカレーターに向かおうとしたところ、目の前の売店で「カズ」の顔が僕の目に飛び込んできた。
僕と付き合いの長い方はよくご存知のとおり、僕は「カズ」「伊達公子」そして「アイルトン・セナ」が大好きだ。
「一番大事なのは、試合に出て活躍したいという気持ち。お金のためじゃない。もちろん、お金は大事だけど、試合に出て活躍すれば、お金というのはついてくる。若い選手を頑張らせるために僕はやっているんじゃない。僕の背中を見せるためにやっているわけでもない。僕がいるだけでチームの雰囲気が引き締まるとか言われても、僕自身は、試合に出て活躍したいからやっているに過ぎないわけです」。
でも、その「カズ」が頑張っている姿を見て、彼の「生き方」を見て、僕は「気持ち」を「鼓舞」され、「よし、頑張ろう!」という気にさせられる。
一昨日、インターネットリサーチ時代の「盟友」である大谷さんから頼まれて、彼が今、学長を務める「八戸大学」主催の「日本一受けたい集中講義」で講義をしてきたが、超多忙な合間を縫って、とんぼ返りで僕が八戸まで行く理由は、大谷さんの生き方が、社会に「勇気と自信」と「希望」をもたらすからである。
サンブリッジ創業者のアレン・マイナーに頼まれ、2011年3月からサンブリッジの仕事を手伝うようになり、2012年1月5日にサンブリッジ グローバルベンチャーズを設立したのは、アレンの夢と僕の夢が似かよっており、僕がドリームビジョンでは成し得なかったことを実現できると思ったからである。
「失意の日本代表落選」が「カズ」をここまで頑張らせているのだとしたら、インタースコープで「悲願のIPO」を断念し、ドリームビジョンで大失敗をしでかし、晴耕雨読ならぬ「晴『読』雨読」生活をしていた失意のどん底の時代があったことが、今の僕の原動力とも言える。
「人生万事塞翁が馬」。
久しぶに、大好きな「カズ」の記事を読んで気持ちが高揚しているが、今年一年の「マスタープラン」を作成し、地道にコツコツと、頑張ってやっていこう!