今年の誕生日だったか、起業して25年が経った頃だったかに書いたブログには、思いの外、反響があった。
自分としては、いつもどおり、その時に思ったことを書いただけだったが、今年7月頃には、僕の人生で最大と言っていいチャレンジの報告ができるようにしたいと書いたことに、興味を持ってくれたのだろう。しかし、残念ながら、それが実現できず、7月には何のアナウンスもできなかった。
その理由は、今年前半は海外出張が多く、また、自宅の引っ越しがあり、充分な時間を投下できなかったことがひとつ。もうひとつは、僕の見積もりというか、外部環境分析も内部環境分析も甘かったということだ。でも、ここで諦めるわけにはいかない。
このチャレンジは、僕の人生にとって「終わっていない宿題」のようなもので、死んでしまった後では、宿題に取り組むことはできない。時間は掛かっても、リソースが足りなかろうが、実現したい。
ところで、その僕にとっては「終わっていない宿題」に一緒に取り組んでくれているシリコンバレーのパートナーから、以下のようなコメントをもらった。
In general you are honest but in a self-deprecating way….You are much better, and more experienced than you sound 🙂
彼は決してお世辞を言うタイプの人間ではなく、たしかにそうだなと思う反面、素直に彼の言葉を受け入れられない自分もいる。実は一昨年の12月、まったく同じことを、僕が客員教授として教えている法政大学MBAでの同僚の先生からコメントされたことがある。
「平石先生はなぜ、そんなに自己評価が低いんですか?」
打ち上げの3次会だったこともあり、酔った勢いだったらしく、ご本人は、そのことを覚えていないらしい・・・。しかし、謙遜ではなく大したことはしていないが、たしかに、そういう傾向はなきにしもあらず、何故、そうなのか?と思った。
結論は、父親の教育と、僕自身の弱さにあると思う。
僕の父は、出来の悪い息子の将来を心配していたのだろうが、「社会に出ると、誰もわざわざ憎まれ口を叩いてまで、お前のことを叱ってくれる人はいなくなる。なので、そうそうお前を褒めるわけにはいかない」といい、僕はとにかく、ダメ出しをされ続けていた。
バンデューラの「自己効力感(Self-Efficacy)」でいうと「言語的説得」という、周囲から「お前はできる!」という言葉を掛け続けられることが、自己効力感を育む上で重要な要素のひとつとして挙げられているが(特にスポーツ選手等には必要だと言われている)、その真逆の教育をされていたということになる。なので、僕は自分の子供には、とにかく褒めることを心掛けている。
もうひとつは、僕は、高校時代、典型的な落ちこぼれで、その事実が自己効力感を阻害したのだと思っている。
僕は地元(福島県)では名門校のひとつである安積高校を受験したが見事に失敗。定員割れの高校に入学するも、3ヶ月で退学。結果的に中学浪人をした。その翌年、安積高校を再受験し、何とか合格したのはいいものの、1つ年下の「同級生」と上手くやれず、また、拙著「挫折のすすめ」にも書いたが、古文・漢文がとにかく嫌いで成績が悪く、追試追試の連続に嫌気が指し、好きだった英語も勉強しなくなり、成績は学年432人中、常に300番台後半になってしまっていた。中間テストや期末テストは、殆ど分からない問題を見ながら、ただただその時間が過ぎるのを待つだけで、半ば人生を諦めていた。
次いでに言えば、そんなことで三流大学しかいけず、そこでも自分の居場所は見つけられず、あまりに中途半端な4年間を送っていた・・・。
その記憶というかトラウマが今も自分の心の中にあり、自分自身を認めることができないのだろうと思っている。
50歳を過ぎてから、残りの人生を意識するようになった。昔と較べて寿命な伸びているし、年齢の概念も変わってきているが、それでも、還暦まで10年もないという現実は、頭をハンマーで殴られたようだ・・・。
「終わっていない宿題」を片付けるには、正直、体力的にも精神的にもハンディが大きいのは事実だが、この世を去る前に「終わっていない宿題」を提出したいのなら、今しかない。
ところで今日は、僕がGPの1人を務めている「梅田ファンド」の投資委員会があり、このエントリーは大阪出張の帰りの新幹線の車中で書いているのだが、投資委員会の後、既存投資先のヤムスクロールの水上さんと話をしていた時、彼が何気なく言った言葉が印象的だった。
「楽しそうなことは、たいがい大変ですよね・・・」。
そう、そう簡単に「人生最大のチャレンジ」を実現できるわけがない!
いい歳をして恥ずかしいが(そもそも、こういう内容のエントリーを書いていること自体が恥ずかしいが)、僕にとっての「人生の成功」は、その内容はさておき、マラソンの有森裕子さんが、2度めのメダルを獲った時に「初めて、自分で自分を褒めたいと思う」と言っていたような人生を送ることだ。
あまりに恥ずかしい内容なので、暫くしたら、削除してしまうかもしれないが、「終わっていない宿題」を出すことを諦めないように・・・。