人生の矛盾:「挑戦」と「安息」。

昨日は、ドリームビジョンの監査役でもあるダイアログマーチャンダイズ社長の堀水と久しぶりに食事をした。本当は昨年末のはずだったのだが、僕のノロウイルス騒ぎで今年に持ち越しとなっていた。

ダイアログは1996年の設立。僕にとっての最初の会社であるクリードエクセキュートの事業を独立分社化したというのが経緯である。はやいもので、あれから今年で丸12年になる。

堀水が言うには、今年度(ダイアログは3月決算)は少々苦労をしているらしく、今後の事業展開に関して相談にのって欲しいという。

実際には何もしていないが取締役である僕から見たダイアログおよび堀水に対するアドバイスをして欲しいというので、僕なりの見解を述べたが、僕が話したことは、実は、すべて堀水の心の中にある。「答え」は本人が一番良く知っている。

ところで、僕の直接の知り合いらしい「リンドバーグ」というペンネーム?の方から、久しぶりに僕のブログにコメントを頂いた。僕の記憶が正しければ、この方は、僕がドリームゲートでブログを書いていた時にも何度かコメントを下さっている。

「近々、お互いに喝をいれるために突然現れると予告しておきましょう」ということなので、お会い出来るのを楽しみにしたい。

さて、その方のコメントには、考えさせられるものがあった。

ご関心のある方は、前回のエントリーのコメント欄をご覧頂ければと思うが、その中のいくつかには説明をしておきたいと思う。

まず、「あれほど情熱を注ぐとおっしゃってた『八戸を日本のシリコンバレーにする』プロジェクトは進捗いかがですか?」という質問に対して。

実は昨日、正式にリリースがあったが、マネックスが八戸に「コンタクトセンター」を開設することが決まった。松本さんのブログでも紹介されている。

これは、すべて、大谷さんの地道な「誘致活動」の賜物である。

彼は昨年の8月(だったと思う)以降、ブログでの進捗報告を含めた「八戸プロジェクト」に関する一切の発言をストップした。

それは、同じヤフーの子会社でもインフォプラント時代はよかったが、インタースコープと合併し、ヤフーバリューインサイトという社名、つまり、ヤフーの冠を頂いてしまったとなると、その会社の経営者である大谷さんの「八戸プロジェクト」に関する行動なり発言は「ヤフーとしてものなのか?」と見られる可能性があり、関係各者にあらぬ迷惑をかけるリスクをヘッジするために、彼は「水面下」に潜ったのである。

実は、僕とふたりで「八戸プロジェクト」の「オフィシャルサイト」の立ち上げ計画を進めており、そのドメインを取得し、サーバまで契約をしていたが中止した、という経緯がある。

マネックスの発表により、それがようやく日の目を見たというわけだ。大谷さんの郷土愛と構想力、そして、行動力には心から賛辞を贈りたい。

また、八戸プロジェクトはこれで終わったわけではなく、水面下で進行中のことが多々ある。いずれ、関係者より、発表される時がくると思う。

次に「あれほど毎日コメントされてた『坊主頭のりょうへいさん』とのその後のコンタクトは?」という質問について。

3ヶ月ぐらい前だろうか、彼がドリームビジョンのオフィスを訪ねて来た。「このことはブログには書かないで下さい」と言われていたので、何も書かずにいた。

そのようなことなので詳細は何も書けないが、彼は今、人生の大きな転機にある。僕のブログに毎日コメントする精神的余裕はないと思う。

でも、彼との友情は何も変わっていない。僕は、彼のチャレンジを心から応援している。

次は「平石さんの主義主張には共感を覚えますが、シリアルアントレプレナーとしての推進力や一貫性や行為継続には少しだけ不安を感じています」というコメント。

これは、ごもっともである。何も説明することはない。そのとおりである。

但し、ひとつだけ説明を加える意味があるとすれば、それは、僕はどうしても自分で仕切らなければ気が済まない、やり遂げなければ気が済まないという「事業は無い」ということに気がついたということだ。

では、それにも係らず、なぜ、こうして、また、スクラッチから会社を立ち上げようとしているのか?

それは「理念」に対する拘りである。そのことが、よく分かった。

いったい自分は何を大切にして生きているのか?何をしようとしているのか?

ここ数ヶ月、そのことをトコトン突き詰めてきて、自分のことがよく理解できるようになった。そして、今まで以上に、そのこと(理念)に拘るようになった。

このことは、ドリームビジョンの社員やスタッフに聞いてもらえれば、よく理解して頂けると思う。

また、「今のあなたに必要なのは、最近失われつつあるかもしれない燃えるような闘志=意志の力ではないでしょうか?」ともある。

これも、そうかもしれない。

しかし、僕は自分自身の「変化」を感じており、その変化を止めようとか、曲げようとは思っていない。むしろ、その変化を素直に受け入れようと思っている。

僕は、決して精神的に強い人間ではなく、むしろ、とても「弱い人間」である。表現に正確さを期せば、精神的に不安定であり、感情の起伏が激しい人間だ。

でも、少しずつ、その変動の幅が小さくなってきている。つまり、物凄くエネルギーをほとばしらせることがなくなった分、物凄く落ち込むこともなくなった。意図的にそうしてきた面も、自然にそうなってきた面もある。

それは、年齢のせいと子供ができたせいのような気がする。

「今のあなたに必要なのは、最近失われつつあるかもしれない燃えるような闘志=意志の力ではないでしょうか?」という点に関して言うと、少なくとも今の僕は、「燃えるような闘志」を持ちたいとは思っていない。

言葉遊びに聞こえるかもしれないが、僕はむしろ、「静かな闘志」を持ち続けたいと思っている。その方が、リンドバーグさんが言うところの「意志の力」を持続できる気がする。そう思うようになった。

ゴルフで言えば、何が何でもバーディを取ってやるという考えは止めて、ボギーでいいと思うようになった。その代わり「すべてのホールをボギー」で回りたい。何故なら、それで「90」を出せるから。

バーディを2つ取っても、パーを5つ取っても、大叩きがあれば、スコアはまとまらない。

たしかに、絶対的な技術という点で判断すれば、バーディを取れる方がレベルが高いのは言うまでもない。

でも、そういうアップダウンの激しいゴルフは、精神を消耗させる。

20代30代だったら、それでもいいかもしれないが、40代の僕は、そういうゴルフは、もうしたくない。コンスタントにスコアを出し、優勝はなくても、確実に「賞金」を稼ぎ、資金(体力)を蓄えたい。

インタースコープを立ち上げた頃(30代)のような「瞬発力」や「億単位の資金」があるわけではなく、また、100年に一度と言ってもよいインターネットというテクノロジーの黎明期に、まさしくそのネットビジネスをしているという、社会的ムーブメントという後押しがあるわけでもない。

その事実を正面から受け入れ、今の僕に合ったゴルフをしたいと思うようになった。

そして、コツコツと準備を継続し、虎視眈々と次のチャンスを狙い、僕にとって「ここはバーディチャンスだ!!!」と思える時が来た時に、そのバーディを狙って取れる実力を身に付けたい。

50代の前半に僕の職業人生のピークが来るように、そのシナリオに向かって、あと5~6年は実力をつけること(準備)に専念したいと思っている。下手な色気は出さないようにして。

自分の心の奥にある「声」を信じたい。

ところで、前FRB議長のアラン・グリーンスパン氏の著書「波乱の時代」の上巻を読み終えた。昨日、堀水と会う前に、渋谷の紀伊国屋書店に行き、下巻を購入した。とにかく、素晴らしい内容である。

その上巻に、こんなことが書いてあった。彼が新婚旅行でベネツィアを訪れた時のことだ。彼の著作の主題である「世界経済」に関することではない。

「ベネツィアは創造的破壊の反対の極なのだ。過去を維持し、楽しむための場所であって、未来を創造する場所ではない。だが、まさにその点が重要なのだ。ベネツィアは安定と永遠、美とロマンスに対する根深い欲求を満たしている。ベネツィアに人気があるのは、人間性の矛盾のうち、一方の極を代表するものだからだ。人間は物質的に豊かになりたいと望む一方で、変化とそれに伴うストレスを避けたいと望んでいるのである」。

人生には色々な時期がある。インタースコープの創業期は、僕の人生=インタースコープと言っても過言ではなかった。僕にとっては、すべてが「仕事」だった。

その頃が「太く短く」だったとしたら、今は「細く永く」という感じだろうか?

僕は何かに「挑戦する」ことが好きだ。でも、その一方、「安らぎ」も求めている。

ひとりの時間や子供と触れ合う時間も大切にしたい。

特に、子供との時間は大切にしたい。何故なら、今しか出来ないことだから。

中学に入ったら、もう、親とは行動を共にしたくないだろう。

僕がそうだったように。