僕に影響を与える人たち。田坂広志さんと川井忠史さん。

東京としては久々の積雪となった今日は、暦の上では「節分」。子供に数粒の豆を渡すと、「鬼は外!!福は内!!」と、ちゃんと豆まきをしていた。

さて、昨日から何を書こうかと考えていた。

書きたいテーマはたくさんあるものの、その題材をもとに、僕はいったい何を伝えたいのか?その根底にあるものは何なのか?が自分でも整理できず、今まで書かずにいた。

でも、結論がないのも結論かと思い、ようやく子供が寝付いたタイミングを見計らって、こうしてキーボードに向かってみた。

先週の金曜日(2/1)は、渋谷マークシティで行われた「田坂広志さん」と「アレン・マイナーさん」の対談風のセミナーに出掛けた。

受付を済ませると、田坂さんとアレンさんが対談の準備をしている姿が目に留まり、挨拶をした。すると、田坂さんが「また、来てくれたの。いつも(僕の講演のことを)ブログに書いてくれて、ありがとう・・・」という、思いもかけない言葉が返ってきた。

まさか、田坂さんが僕のブログをいつも読んでくれているとは考えられないので、秘書の方が確認されたエントリーを読んでくれているのだろうが、それにしても驚いた。とても嬉しく、光栄に思う。

田坂さんの話しや著作は常に示唆に富んでいるが、先日の話しで最も印象に残ったことは、これからの知識社会においては「非言語」的価値が最も価値を持つ、ということ。つまり、「暗黙知」にこそ価値があるということだ。

最近は下火になったのかあまり聞かなくなったが、一時期は「形式知」という言葉が社会を賑わし、Knowledge Management という概念が注目されていた。

田坂さんが、形式知ではなく「暗黙知(非言語的価値)」が重要だとするのは、その概念が注目されなくなった理由とは別の理由によるものである。

それは、I.T.化が高度に進展した結果、何らかの知識が必要になった場合は、グーグルなりWikipediaなりで検索すれば、大概のことは調べられる時代になったわけであり、知識を持っていること自体には、あまり価値がなくなってきたということだ。

つまり、言語化できない、GoogleやWikipediaでは調べられない「知恵・スキル・センス」と言ったものが、これからの社会においては重要性を増すということだ。

これは、梅田望夫さんの「ウェブ進化論」で将棋の羽生善治さんが言っていた「知識の高速道路を抜けた後には大渋滞が待っている」ということにも通ずる話しである。

もうひとつ、このことに関連することとして、定量データよりも「定性データ」の重要性が増してくる、ということも仰っていた。

僕の直前のキャリアであるインターネットリサーチが普及したことにより、アンケート調査のコストは、従来のそれの「1/10」に低下しており、簡単に「定量データ」が取得できる時代になったことは、この話しの分かりやすい事例である。

田坂さんの話で、もうひとつ、考えさせられたことは、「お客様が知恵を出したい(貸したい)と思う企業かどうか?」ということ。

田坂さんは、アマゾンの書評を例に挙げてそのことを説明されていたが、アマゾンの書評自体は誰でも知っていることである。しかし、そのことが意味することの本質が理解できた気がした。

書評(コメント)の機能自体は、どの企業でも簡単につけることができる。現に、僕が始めたクローズドブログにも、コメント機能はついている。でも、そこにコメントしてくれる方がいるかどうかが問題なのである。

「お客様が知恵を出したい(貸したい)と思う企業かどうか?」という観点に関連することとして、前回のエントリーで紹介した、グレヒスの川井さんとの会話を思い出した。

ドリームビジョンを創業してからの僕は、とにかく、労働集約的な事業ではなく、仕組みで稼げる事業を毎日毎日考えており、そのひとつとして、人材紹介でいうところの「候補者」を集めるための「メディア」をつくりたいと思っていた。

何故なら、外部のメディアにかなりのお金を投下して「候補者」を集めているので、自社メディアをつくれれば、そのお金が浮く(=利益になる)ということと、優秀な「候補者」が集まるメディアをつくれれば、自社で「紹介事業」をするのではなく、人材紹介会社に「候補者」を紹介するという、僕らが利用しているメディアの立場に、自分たちがなれると思っていたからである。

しかし、川井さんは、僕のその「邪(よこしま)な考え?」を、見事に否定してくれた。

因みに、川井さんはインテリジェンス出身であり、人材関連ビジネスのことは熟知している。

その川井さん曰く、ドリームビジョンが新しい転職に関連するメディアをつくったとしても、それは、採用側にとっても、転職者側にとっても、あまり意味を為さない。つまり、メリットがないことだと教えてくれた。

「採用側」にしてみれば、その手のメディアが乱立することは、候補者が閲覧・登録するメディアが分散されることになり、出稿の数が増えることに繋がり、採用の費用対効果が低下するリスクがあるだけでメリットはないし、「転職者側」にとっても、登録するメディアが増えて手間暇が増えるだけで、あまり意味はないとのこと。

何らかの領域なりテーマに特化しており、その内容が優れていれば話しは別だが、それでも、自分たちの「金儲け」のため「だけ」のメディアは、絶対に成功しないだろうと付け加えていた。

この最後の一言は、僕にストレートに突き刺さった。

そうなのである。ここ最近の僕は、とにかく、非労働集約的な事業をつくりたい、はやく、売上・利益を伸ばしたいという想いが強く、以前の僕が持っていた「誰かの役に立つ」ということを何よりも大切にする姿勢が薄れていた。

それでは、田坂さんの言う、「お客様が知恵を出したい(貸したい)と思う企業」にはなれないだろう。

そのことに気がついた。

そして、以前から考えていた、あることを実行に移そうと思った。

その「あること」のことは、近い将来、実行に移した時にお話したいと思う。