ワールドビジネスサテライトの取材を受けて・・・「損」を許容できない人。

昨日は、先週からスタートした「無料講座」の第2号の原稿を書いていて、久しぶりに夜中まで会社にいた。30代の頃と違って、睡眠不足は身体にキツイ。

さて、今日のエントリーでは、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」の取材を受けたことに関連して、僕が考えたことを書こうと思う。

前回のエントリーで書いたとおり、WBSの取材を受けたきっかけは、ソフトブレーンの小松さんから打診されたことだ。

ソフトブレーンは多くの方がご存知のとおり、宋文洲さんが創業された会社である。僕は、宋さんのことがとても好きで、彼のメルマガを読んでいる

その宋さんのメルマガの最新号に、興味深いことが書いてある。

「高く買って安く売る人達の欲」というタイトルで、サブプライム問題に始まった株価下落局面において、買った値段よりも安い値段で株を売る人たち、つまり、「損」を確定している人たちのことを書いたものだ。

宋さんが言うには、長期投資ではなく、短期間のうちに「高く買って安く売る」人たちというのは、実は「欲深い」人だという。

つまり、「損」をすることが許せないので、とにかく「最低限」の損に留めようという心理から、すぐに「ロスカット」をするというのが、宋さんの主張である。なるほどと思った。

実は、僕は、2年ぶりに株式投資を再開した。正確には、再開しようと思ったが止めた、と言った方がいい。

昨年末に数銘柄を購入し、その内のひとつは年内に売却したのだが、年明けまで持ち越した銘柄は、何年かぶりかで安く終った年明けの初日に「損」を出して処分した。

そう、僕こそが「損を許容できない人」なのである。

実は、ドリームビジョンを創めてからは、殆ど株式投資はして来なかった。最もリスクの高い創業期には、いつ何時、財政出動が必要になるか分からないので、とにかく「損をする(お金が減る)」ことは許容できず、超低金利の銀行に預けるのを良しとするしかなかったからだ。

そういう状況であれば、株式投資をするべきではないのである。

昨年末、久しぶりに株式投資を始めようと思ってYahoo! Finance を見ていた僕に、妻は「余裕がない時に株を始めると、失敗するよ」と忠告をした。おっしゃるとおりである。

ひとつだけ、言い訳をすると、ここ2年間は、とにかく「がまん」の年と位置づけてきたが、今年は、少しずつ、自分から、変化なり「攻め」の姿勢を出して行こうという思いがあり、その一環として、自分が取れる範囲のリスクを取ろうということだった。

しかし、素直に自分の心の内を見つめてみると、「絶対に利益を出してみせる」という「強欲」な考えがあり、それが少しの「リスク(損)」も受け入れられないという心理と姿勢を生んだのだと思う。

因みに、僕は、何社かのベンチャー企業に個人的に出資しているし、昨年の秋から、ドリームビジョンとしての投資事業も始めたが、僕は「こいつに賭けて摩ったら仕方ない」と思える人間に、摩っても僕の生活や会社の経営が「困らない金額」しか投資しないことにしている。

つまり、僕は「損をすることを織り込んでいる(覚悟している)」ということである。何故なら、投資に百発百中はあり得ないからだ。

上場株式投資においても、同じことが言えるのである。

ところで、ワールドビジネスサテライトの取材のテーマである「起業率(開業率)の低下」は、まさしく、「リスク」を許容できない人が増えている=「リスク」を許容できる人が減っている、ということなのだろう。

それは何故か?というのが今回の特集の目的らしいが、その問いに答えるのは簡単ではない。

それでは、話しが前に進まないので、成否は別として、僕の意見を述べようと思う(実際に、WBSの取材で述べた)。

僕は、日本社会において「起業率(開業率)」が低下している「主因」は、今の日本社会が「失敗を許容しない価値観の社会」だからだと思っている。

例えば、起業して売上や利益がろくにない段階で、銀行の融資を受けようと思っても、殆どのケースで無理だろう。

また、それなりに軌道に乗ってきて銀行融資を受けようとすると、殆どの場合、代表者は「個人保証」を求められる。

確かに、融資をする側に立てば、何らかの「保証」を求める理由は理解できる。しかし、自分が経営している会社が倒産した場合、その会社の代表者に財産が残っているはずがない。つまり、返しようがないのである。

そうなると、自宅を担保に入れていたならば、一文無しになり、尚且つ、住む場所さえ失くすことになる。

そこまでの「リスク」を負ってでも「起業」しようという人は、余程の自信家か?バカかのどちらかである。

先日のエントリーに書いた「Mark Ferris」という僕の友人に言わせると、「起業家」というのは「超レア・アニマル(珍種)」らしい。上手いことを言うものだ。

さて、2/11(月)のWBSでは、「起業率(開業率)の低下」にスポットをあて、様々な人や会社を取材し、その本質を探ろうということらしい。

前回のエントリーで「ここ数年だか10年で、日本から100万社以上の会社が無くなった(廃業した)らしい」と書いたが、正確なデータをご紹介しておきたい。

「中小企業白書」よると、1986年に「535.1万社」あった企業数が、2004年には「433.8万社」に減っているという。

これが、開業と廃業の差なのか?それとも、合併等による社数の減少も含まれているのか?それは分からないが、いずれにしても、数として「100万社」が無くなったことが事実のようである。

2/11(月)のWBSで、どんな内容が放映されるのか?楽しみにしたいと思う。