彼女が、そこまでして働く理由。

僕の妻の話で恐縮だが、彼女は今月で大学院を卒業し、4月から働くことになっている。少し前まで、いわゆる「就職活動」をしていた。

「就職活動」とは言っても、彼女の場合、月金(フルタイム)で「企業」で働くわけではなく、「臨床心理士(厳密には、今秋の試験に合格することが前提)」として、何箇所かの施設での仕事を掛け持ちするわけで、その「パートタイム」の仕事を探していた。

昨今の社会事情を反映してか、臨床心理の学部なり大学院は、とても競争率が高い。

しかし、その狭き門をくぐり抜け、臨床心理士の資格を取っても、何箇所かの仕事を掛け持ち、フルフルに働いたとしても、年収にして、せいぜい、240~300万円を稼ぐのがやっとである。

男性であれば、それで家族を養うことはできない。

医者(病院)の場合、健康保険という「財源」があるが、臨床心理士は、日本ではまだまだ「社会的評価が低く」、職業として認知されていないと言っていい。

尚且つ、鬱病や人格障害等で悩む患者さんのケア(カウンセリング)は、相手との信頼関係が何よりも大切であり、心を開いてもらう必要があるため、自分の都合(子供のことも含めて)でカウンセリングをキャンセルすることは出来ない。

そんなことで、子供を保育園に預け、具合が悪くなった時は、病時保育に預けて仕事をするわけだが、保育園に支払う費用を差し引くと、いったい何のため?という金額しか手元に残らない。

それでも、彼女は働くことを選択する。

人間は「経済合理性」だけで意思決定をするわけではない、ということだろう。

彼女は、一児の「母親」であり、ひとりの「女性」でもあり、自分のキャリアを大切にする「職業人」でもあるわけだ。

彼女の「生き方」を傍で見ていると、自分の生き方をも考えさせられる。

因みに、僕の母親(産みの母)は、フルタイムで働いていたこともあり、僕にとっては、女性が出産後も働くことは「常識」だった。

そんな女性が増えることを期待したい。そして、そのことに、何らかのかたちで貢献できればと考えている。