「主観(自分の価値観)」という「色眼鏡」。

僕の仕事は、投資先のベンチャー企業の経営者や社外取締役あるいは顧問契約等をしているベンチャー企業の経営者に対して、自分の拙い経験から得られた知見と市場分析を踏まえたアドバイスを提供することだが、客観的に物事を見つめ、相手にとって現実的なアドバイスをするのは、とても難しいと感じるようになった。

今から数年前のことだが、マッキンゼーを経て独立し、ご自分でコンサルティングファームを経営されている方が、こんなことを言っていた。

ある方が、米国の一流ビジネススクールでMBAを取得し日本に帰国して、マッキンゼーに就職したいと相談に来た時に、「君は主観が強いので、コンサルタントは向かない」と諭したという。

因みに、その方は、その後、起業し、見事に成功されている。

要するに、「主観(=自分の価値観)」が強いと、客観的な市場分析はできたとしても、それを踏まえた戦略立案(提案)において、どうしても、自分の価値観に照らして良い(価値がある)と思うことを言ってしまう、ということだろう。

僕にどの程度のコンサルティング能力があるかは別として、最近、その方の仰ることの意味が分かるようになった。

また、この話は、自分で起業する際にも当てはまると思う。

自分の想いが強過ぎると、どうしても、市場のニーズを冷静に見れなくなる時がある。

人間は得てして、自分の中に「仮説」があり、その仮説を支持する「情報(材料)」を集めようとする。

「熱く」ある必要があるのは「努力(取り組み)」であって、「機会とリスク」に対する見方は「冷たく(冷静)」あることが大切である。

20代の時にお世話になっていたコンサルティングファームに「冷たい状況認識と熱い対応」と言う標語があったが、その言葉の意味の本質を、今になってようやく「理解」できたような気がしている。

田坂広志さんが~「風の便り」ふたたび ~ というメルマガを送られているが、以前に読んだときには気づかなかったことに気づくことが多々ある。

田坂さんも、そういう意味で、送られているのだろう。

人生は最後まで勉強・・・ということか。