「既に起こった未来」。

今日は、JAGAT主催のカンファレンスでの講演があった。

僕の仕事はモデレーターで、Web、ケータイビジネスの「キラーコンテンツ」なるテーマでの議論を通じて、これからのビジネスに関する「示唆」を抽出することで、言ってみれば、会場の反応と議論の流れを見ながら、テーマと議論の方向性を常に「同期」させることだった。

「CGM」つまり「コンテンツ」という部分では「4トラベル」の野田さん、コンテンツを載せる&流通させる「デバイス(&通信インフラ)」という部分では「ビートレンド」の井上さんが、それぞれに実務に基づいた深い造詣を惜しみなく披露してくれて、事前の打ち合わせを超えた、とても有意義なセッションになったと思う。

因みに、Yahoo! JAPANのトラフィックが昨年12月に初めて「減少」に転じた(とても大きなシグナルである!)ことが象徴しているように、「ポータル」として「トラフィック」を集めて「自社サイト内にコンテンツを包含する」というビジネスモデルが限界にきており、いわゆる「個々のディスティネーション(目的サイト)」に重心が移ってきているのは間違いない。

一方、DeNAが過去最高売上と営業利益を叩き出したことは、額面通り受け取ると「ソーシャルゲーム」が支持されているということになるが、ソーシャルゲームが支持される理由は「コミュニケーション欲求」であり、ネットの「キラーコンテンツ」の本質は「コミュニケーション」だと言える。

「ゲーム」という「触媒」を通じて、自分と趣味の合う他人との交流(コミュニケーション)を楽しんでいるのである。

サバーエージェントの「アメーバ」が黒字化したのも、「アメーバピグ」という「アバターゲーム」のお陰と言っても過言ではないだろう。

4トラベルの野田さんが言うには、アメーバピグのユーザが使っているお金の平均は「1,500円/月」だとそうである。

シリコンバレーでは既に、ビジネスモデルの「主流」は「Freemium(フリーミアム:入口はフリーだが、有益&便利なコンテンツ&サービスは有料)」と言われているが、まさしく、そういうことである。

また、もうひとつのインプリケーション(示唆)は、デバイスの中心がPCから「モバイル端末」に移ってきているという事実である。

きちんと解説すると長くなるので割愛するが、モバイル端末の代表格である「ケータイ」のアドバンテージは「プッシュ」で「メール」が届く(届けられる)ことであり、メールの開封率は「ほぼ100%」である。

また、ムーアの法則のとおり、CPUとハードディスクの価格性能比は著しく向上しており、今やiPhoneのハードディスクは「32GB」で、そこらのパソコンと同じであり、クラウドコンピューティングとの相乗効果で、ネット接続デバイスとしての「スマートフォン」の価値がますます向上していくのは不可逆的だろう。

何故なら、いつでもどこでもポケットに入れて持ち運べて、尚かつ、自宅やオフィスのPCと簡単に「同期」できる。

つまり、顧客への「リーチ」が至上命題であるマーケティング目的のWebサイトは間違いなく、「スマートフォン&ケータイ」が中心になっていくと思う。

そして、PCは「Thin Client」化していくだろう。

話は変わるが、昨晩、ネットビジネスのキープレーヤーのひとりである旧友と久しぶりに杯を傾けていた時、彼も「ようやく、ネットバブル以来の大きな波が来たね!」と言っていたが、僕も今日のセッションで、その想いを改めて確信した。

今から3~5年後、日本の「メディア&広告業界」および「インターネット関連業界」の構造は、大きく変わっているだろう。

「既得権」は間違いなく、時間の問題で「崩壊する」。

僕たちが今、目にしているのは「既に起こった未来」である。