「夢」は、口に出して言ってみる。

栗木史多(くりき のぶかず)さんの「一歩を越える勇気」を読み終えた。

何と言っていいか、凄い人だとしか言いようがない。

何に対してもカッコつけない人なんだと思う。

本当に「芯」が強くなければ、そこまで自分をさらけ出せないだろう。

ところで、彼の著書からもらった勇気(勢い?)を借りて、読み返そうと思っていた、ある書類に目を通した。

書類の日付は、2009.12.04。

ちょうど昨年の今頃(ひたすら本を読むのが日課だった)、この先の人生のことで思い悩んでいた時に、とあることで法政大学の小川先生から電話があり、相談に伺った時に「本を書いたらどうですか?」と言われて、僕なりに書きたいことをまとめたものだった。

そのメモをもって再度、相談に伺った際は、栗城さんのような命を懸けてエベレストへの単独・無酸素登頂を目指しているような人なら話は別だが、僕のような人間が、自分自身の経験をもとに本を書いたところで、いったい何になるのか?(自己満足に過ぎないし、仕事には繋がらない)と思い、結局、原稿を書くことはしなかった。

でも、自分の中で、何かが引っ掛かっていたのだと思うが、小川先生からコメントを頂いたそのメモは、大事にとっておいた。

RE:出版(企画案)

目的:起業を通じて学んできた「暗黙値」を「形式値」化することにより、キャリアや人生そのものに悩む人たち(主に20代~30代)に、これからの人生を生きる上でのヒントを提供する。
(→実際は、自分の経験を振り返り、自分自身に言い聞かせているようなものだ/笑)。

形式:自分が学んできたことを、ひとつずつのメッセージにし、そのメッセージの意味することと、それを学んだ背景を解説する。

内容(メッセージ案):

1. 自分を知る。

自分の性格、才能のあること、才能のないこと、
好きなこと、嫌いなこと、
恐れていること、自分の成長を阻んできたこと、etc.

2. 目的と手段。

いつの間にか手段が目的になる。
「起業は手段」であり、目的ではなかった。
しかし、そこそこの成功が、手段を目的に変えてしまった。
そのことに気づけなかったことが、大きな失敗に繋がった。

3. 現実を知る。

自分が成し遂げたもの。自分が持っているもの。
自分が失ったもの。自分が持っている能力、友人、恩師。

4. 捨てるものを決める。

あれもこれもは無理。
「大切なものを捨てる」勇気を持つ。
その前に、自分が大切だと思っているものが、本当に大切なものなのか?
そのことをよく考える。

5. 伸ばすものを決める。

好きなもの。努力が苦にならないもの。
そのことでおカネを稼げるもの。
おカネは稼げなくても、それ以外の何かを得られるもの。

6. 個人(趣味)ならできるもの。仕事(他人に責任を持つ)でもできるもの。

自分のためならできることと、
他人のためにもできること(責任を持てること)は必ずしも一致しない。

7. エゴを捨てる。

自分は誰の役に立てるか?

8. 最初から無いよりも、一度得たものを失うのはもっと辛い。

リスクは顕在化すると覚悟する。
失敗した時のダメージを事前に考える。

9.「世の中の流れに乗って何かを変えるきっかけを創ることはできても、
 ひとりの力で世の中を変えることはできない(イチロー)」。

自分の力を過信してはいけない。失敗する。

10. 自分のスタイルは変わる。そのことを恐れない。

気持ちも変わるし、能力も変わる。
経験から見えることもあるし、見えることにより、
怖くなってできなくなることもある。

11. 失敗しても、トラックレコードは消えない。

自分が成し遂げてきたことまで無意味だと思わない。

12. やりたいことが出てくるまでは、何かを無理に始めない。

自然の流れに身を任せる勇気を持つ。

13. 潮時を知る。

盛者必衰の理を知る。足るを知る。感謝をする。

2009.12.04 平石郁生

ところで昨晩は、こう書くと、その手の事情に明るい方であれば、その方がどなたか容易に推測できると思うが、シリコンバレーでスクラッチから事業を興し「NASDAQ」にIPOを果たした唯一の日本人(その方以外では、既存のビジネスを米国で展開し、NASDAQにIPOさせた日本人はいるらしい)と、都内の某所でお会いした。

法政の田路先生のご紹介でお会いしたその方は、表情と話す内容から、鋼のような精神力の持ち主であることが伝わってきて、これから取り組もうとされていることのスケールには、ただただ聞き入るしかなかった。

その方がやろうとされていることと較べたら、とても小さなことだけど、僕がこの先の人生でやりたいと思っていることがある。

それは、大学生(20代の社会人も入れてもいいが、若いほど、伸び代があるという意味だ)を対象とした「投資」の仕組みを創る、というものだ。

これは、法政の田路先生から聞いた話だが、シリコンバレーのスタンフォード大学には、学生向けも社会人向けも含めて、様々なサマースクールのようなものがあり、そこに、少数だが、日本の大学生も行っているそうである。

その中のひとり、ある慶応の学生に田路先生が聞いたところ、他大学の学生にも声をかけて、自分たちで「起業のための勉強会」のようなものを運営しているらしい。

僕がやりたいと思っているのは、そのような優秀でやる気のある大学生を対象とした「起業家養成講座」のようなものを主催し、四半期ごとに事業計画を発表してもらい、優秀な人物(プランも大事だが、人物の方がもっと重要である)には、シードマネーを投資する、という実にシンプルなものだ。

問題は、投資した資金を回収できるのか?ということである。

仮に、四半期ごとに「500~1,000万円」ずつ投資するとして、年間2,000~3,000万円。10年続けると「2~3億円」。

起業家養成講座の講師や会場費等の諸経費が年間1,500~2,000万円ぐらいだとすると、投資資金と合わせて、10年で「3.5~5.0億円」である。

僕は、10年で計40人に投資をすれば、その中から、3~4人は成功する人が出てくると思っているが、それを組織の中で説得することはできないだろう。

そうなると、僕がやりたいことを実現するには、成功した創業経営者に「スポンサー」になってもらうしかない。

そのスポンサーを見つけて、学生&20代に限定した起業家養成講座を実現させることが、僕の「夢」である。

栗城さんに触発されて、遂に、自分の「夢」を告白してしまった。

本当にできるだろうか?と思うけど、あとは、実現に向けて、一歩ずつ、進んで行くしかない。