4,990円のイノベーション。

おそらく猛暑日だったと思われる日曜日の東京。

クルマのダッシュボードに表示されていた気温は、35.6度。節電モードの日本には酷な気温である。

ところで、今週も先週に引き続き、代々木公園へ行き、子供の自転車の練習をした。

ここ3回の練習でだいぶ上達し、スタートがまだ不安定だが、だいぶ上手に乗れるようになってきた。

僕たちの子供も今年9月で満6歳。長かったような短かったような、言葉に表現できない感覚である。

話は変わるが、自転車の練習を終えて、近所のカフェ(violette)でランチを食べたあと、原宿にある「JiNS」という眼鏡ショップに行った。

「JiNS」のことは、数週間前、Innovation Weekend のことで森ビルの川端さんとMTGをしていた時、彼から聞いて初めて知ったのだが、とにかく激安 but, オシャレ!で、さしづめ、眼鏡業界のユニクロという感じである。

激安眼鏡では Zoff が有名だが、それを凌ぐ安さと早さに驚いた。

僕が選んだのは、フレーム+レンズで「4,990円!」。待ち時間、30分。

今まで使っていた眼鏡は、2~3万円ぐらいで、頼んでから出来上がるまで、7~10日ぐらいはかかったと思う。

これはデフレではなく、イノベーションである。

僕たちが子供の頃は、眼鏡は「貴金属店」で売っていたりした記憶がある。

新興国の技術水準が向上し、規制緩和とI.T.化が進み経済がグローバル化した今日、大勢の人が購入するもので尚かつ「工業製品」は、パーツを共通にして、人件費の安いところで大量生産すれば、クオリティを保ったまま価格を劇的に下げられる。

僕が高校生の頃、リーバイスのGパンは、7,000円~8,000円ぐらいだったと記憶しているが、リーバイスのラベルがないだけで、ユニクロの2,980円のGパンは、その品質に何ら問題はない。

本当に高品質なものか、徹底的にコスト削減をした規格品か、そのいずれかでなければ選択肢に入ることはない時代である。

僕が中学生の頃、テータム・オニールをキャラクターに起用したセイコーかシチズンが、「なぜ、時計は着替えないの?」というコピーで格安な腕時計を発売した時は、こうして今でも憶えているほど衝撃的だったが、今日では、あらゆるものが、コモディティ化している。

市場調査も僕たちがやってきたインターネットリサーチにより、コモディティ化したと言っていい。

4,990円の眼鏡を買いながら、本物のイノベーションこそ日常生活に溶け込んでいることを実感した。

追伸:JiNS創業社長の田中 仁 氏は、僕が2002年にセミファイナリストにノミネートしていただいた「EOY(Entrepreneur of the year)2010」の日本代表に選ばれている。その賞に相応しい素晴らしい起業家である。

イノベーションとは何か?@KBC

先週金曜日は「KBC」という慶応大学の起業サークルの勉強会にお招きいただき、「イノベーションとは何か?(なぜ、必要か?)」なるテーマで講演(講義?)をさせていただいた。

この4月から客員教授を仰せつかっている法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科(通称イノマネ)での講義だったとしても、とても難しいテーマで、何をどう話そうか?前日まで考えていた。

実は、その前日(木曜日)はイノマネでの授業があった。

ところで、今年は僕にとって「起業20周年」ということと関係あるのかないのかは分からないが、旧知の仲のアレンに頼まれて3月からサンブリッジでの仕事を始めたり、3.11以降しばらくは原発問題で実家(福島県郡山市)の母や弟と対策を話し合ったり、4月の毎週金土はイノマネでのオリエンがあったり、5/20(金)には僕が企画して始めた「Innovation Weekend」のKick-off イベントがあったりと、3月30日で48歳になった身体には、かなり嬉しいスケジュールが続いている。

そんなこともあり、イノマネの授業の後、KBCの勉強会の講演資料をつくろうと思っていたが、集中力がなく、途中で断念。

仕方なく、金曜日のアポをキャンセルさせていただき、朝から資料づくりの続きを行った。

さて、そんなことで何とかギリギリ間に合わせてお邪魔したKBCの勉強会は、学生、それも半分は、この3月まで高校生だったとは思えない優秀な面々だった。

質問を挟みながら講義を進めており、その受け答えで彼らの優秀さは理解していたが、講義が終わった後の質疑応答の時間は、今までに経験したことのないほど、素晴らしい質問のオンパレードだった。

そんな彼らの人生に、何らかのプラスの影響を与えられたようであれば嬉しい。

マクロミルの「ポップコーン」!

昨夜は都内の某「焼き肉レストラン」で、マクロミルの杉本さんと、夫々が法政のイノマネ(MBA)で教えていた学生と、彼らの修了を祝う打ち上げをした。

考えてみると、杉本さんは焼き肉が好きらしく、まだ競合関係だった頃にも、何度か焼き肉屋で会食したことがある。

ところで、その席で、マクロミルが新規事業として始めた「ポップコーン」なる「iPhoneアプリ」を紹介され、早速、ダウンロードした。

同席されていた社長室の有坂さんが言うには、一時はサーバの処理能力が追いつかないほど、相当な数がダウンロードされ、アプリが使われたらしい。

アプリが訊いてくる質問に答えていくと、自分自身のキャラクターが分析され、似たような人と繋がることができ、アンケートbased SNSってことだ。

話は変わるが、一昨年度、彼が副査として指導していた学生の方に「お前、いい仕事してるよな・・・」としみじみ語る杉本さんを見て、変わったなあ・・・と思った。

マクロミル10周年誌にも紹介されているとおり、「一ヶ月働いて利益が出なかったってことは、寝てた方がマシだったってことだろう!」と檄を飛ばしていた杉本さんからは想像できない光景だった。

成功者になると、人間が丸くなるってことか・・・。

彼を褒めちぎっても、僕には一銭にもならないんだけど・・・(笑)。

今年は僕にとって「起業20周年」!!

今月から、新しい仕事を始めた。

たまたま今朝は僕が子供を保育園に送っていく当番だったので、最寄り駅に自転車を預け、スタバでコーヒーを買い、仕事場に向かった。

階段を上りながら、新しいルート、新しいルーティンが生まれるのか・・・と思うと、少しワクワクした。

実は、僕の人生で「大きな決断や出来事」はすべて例外無く、「3月」に起きている。

生まれたのは30日。人生で初めての会社を創った(登記日)のが27日。インタースコープの創業記念日は9日。ドリームビジョンは4日。

今回は1日。

そして、今年は僕にとって「起業20周年」である(1991年3月27日が起業家人生の初日!)。

「現役の起業家」として、30周年(57歳)、40周年(67歳)、そして、50周年?(77歳)を迎えたい。

仕事の内容は、近日中にリリース予定!!

「コンテクスト」を共有できるプラットフォーム。

予定よりも一週間遅れて「企業家とは何か(J.A.シュンペーター、清成忠男訳)」を読了。

評判どおり、シュンペーターの文章は回りくどく読み難い本だったが、得るものは多かった。

「いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ」と併せて、後日、書評を書きたいと思う。

さて、今年3冊目の本は、クリステンセンの「イノベーションへの解」。

読みかけのままの「イノベーションのジレンマ」を読もうと思ったら、山川さんから「こっち(解)を読んだ方がいいです」と勧められた。

まだ30ページほどしか読んでいないが、とても示唆に富んだ内容で、読了した時に何を得られているのか?が今から楽しみな著作だ。

話は変わるが、1997年の発足当時から登録をしている「surveyml(当時は Internet Survey Watch と言っていた)」という「メーリングリスト(ソーシャルメディア全盛の今となっては古典的な香りが漂う)」で、とても示唆に富んだポストがあった。

投稿主は、高広伯彦氏。

その内容は、自分の考えが「自分の考えているとおり正確に相手に伝わることはない」ということ。

一説によると、自分の考えや想いを言葉にした瞬間、伝えたいことの「70%」しか伝わらず(受け手の理解力にもよる)、それを受け取った相手がまた別の人間に伝えるとさらに「70%」となり、階層を2つ経ると、自分が伝えたいことの「49%(半分弱)」しか伝わらないらしい。

つまり、講演等で自分の伝えたいことを伝えようと思うなら、言葉の定義を明確にし、解釈が人によって幅がある題材や表現はできるだけ避け、メッセージをシンプルにする必要がある。

僕のブログにしても、僕が言いたいことが100%伝わることはなく、僕を直接知っているか?また、その付き合いが深いか浅いかで、僕のブログの「コンテクスト(文脈)」や「行間」に対する理解が大きく異なるのは間違いない。

それを踏まえて書く必要があるということだ。

また、この話題に絡むことで、もうひとつ、高広さんはシャープな指摘をされていた。

Twitter や facebook 等のいわゆるソーシャルメディアでの情報発信&受信が多くなってきた現在は、情報の発信力が増幅され、広範な意見交換が可能となっているというポジティブな面がある一方、自分が発信したテーマに関する共通の知識・理解のない人に、自分の意図することとは異なる「解釈」がされ、不必要な誤解や軋轢を生むというリスクも存在する。

高広さんが言うように、オープン過ぎるソーシャルメディアは、時として「コンテクストレス」な状況を生み出すということだ。

僕がどちらかというとTwitter よりも facebookを好む理由のひとつでもある。

また、未だにこうしてブログを書いているのは、字数制限もなく、自分の伝えたいことが伝えられるからという理由が大きい。

さらに言えば、コンテクスト(共通する知識・理解と関係性)を共有できる人達とのプラットフォームが欲しいと思っている。

インターネットリサーチ研究会が機能したのは、黎明期のインターネットリサーチを普及させたいという「インタレスト(問題意識と目的)」と「コンテクスト(共通する知識・理解と関係性)」を持っていたからだと思う。

そういう意味では、どうすれば「イノベーション(革新)」を起こせるか?「イノベーティブな組織であり続ける」にはどうすれば良いか?という共通の「インタレスト(問題意識と目的)」と「コンテクスト(共通する知識・理解と関係性)」を、研究者という立場ではなく、実際に「ビジネス」を立ち上げようとしている(&既にしている)人達と共有できるプラットフォームが創れたらと思う。

マズローは、実は「(自分が属する)コミュニティ発展欲求」という「6段階目の欲求」の存在に気がついていたらしい。

The PIECs(The Platform of Innovation and Entrepreneur’s Community)

こんな感じのプラットフォームを創りたい・・・。

そういう意味では、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科での仕事は、そこへ繋がる「コンテクスト」を持っているような気がしている。

追伸:昨年の今頃の僕は、Twitter の魅力に取り憑かれていたようだ・・・。何事も性急な判断は危険であるw。

ドラッカーから学んだこと。

先月からあまりブログを書かなくなり、今月はこのエントリーが5回目。

ドラッカーは、世の中が変化した後は、それ以前が嘘だったかのように後戻りできなくなるという趣旨のことを書いているが、ブログに関して言うと、まさにそういう感覚である。

でも、以前のブログを読み返してみると、その頃の自分がいかに何も分かっていなかったか(平たくいうと、バカだったということ。今でもそうかもしれないが・・・)がよく分かる。

それだけでも、ブログを書くに余りある理由である。

ところで昨日、とある出来事で、久しぶりにひどく落ち込んだ。

その昨日の出来事で、僕は、ドラッカーのひと言を思い出した。

一言一句は別として、ドラッカーはしばしば、「変化の理由は分からない。しかし、理由は分からなくても、事実をきちんと理解できればイノベーションは起こせる」という趣旨の発言をしている。

たしかにそう思うし、臨床心理士の妻も「理由(原因)を知ろうとするよりも、それ(現実)を踏まえて、これから先、どうするか?を考える方が建設的でしょう!?」という趣旨のことを言う。

たしかにそうだろう。

でも僕は、なぜ、そうなったのか?その「原因」を知りたい。

それは、子供の教育にも繋がる。

僕たちの子供は今年で5歳になったが、人間、5歳にもなれば、立派な人格がある。

そして、彼を見ていると、長所もたくさんあるが、明らかに「これは僕からの遺伝だろう」と思える「短所」がたくさんある。

違う言い方をすれば、僕の責任である。

出来ることなら、僕の「短所」は、子供に残したくない。

そのことで辛い想いをするのは目に見えている。

僕が何故、今の性格になったのか?に関しては、僕なりに「仮説」がある。

その仮説に自信があるのであれば、その仮説に忠実に子供を育てればいい。

しかし、僕の仮説が正しかったかどうかを知るのは、彼が成人した後である。

尚かつ、僕の仮説が正しかったとしても、受け手は、僕とは違う人間である。

ところで、前述のとおり、子供も5歳にもなれば、悩みもある。

個人差はあると思うが、その悩みも、親が訊かなければ、本人からは口にしない。

相手に興味を持ち、相手の悩みを理解しようとする姿勢がなければ、現実は分からない。

「理論的」な「分析」と同時に、「知覚的」な「認識」が必要である。

そんな���とを考えた日曜日だった。

話は変わるが、兼任講師としてお世話になっている「法政大学ビジネススクール(イノベーション・マネジメント研究科)」で、来年度から「客員教授」を仰せつかることになった(予定)。

とても光栄に思う。

今年度と同様、プロジェクトと呼ばれる科目(事業計画の策定)に加えて、通常の講義も担当することになった。

講義名は「アントレプレナーシップ論」。

英文タイトルも要請され、少々勇気が必要だったが「Innovation & Entrepreneurship(イノベーションと起業家精神)」とした。

そう。ドラッカーの書籍のタイトルである。

名前負けするのは必至かもしれないが、最善を尽くしたい。

僕の今までの起業家人生で経験した悲喜交々な出来事をドラッガーから学んだ「原理原則」に照らし合わせ、成功した原因は何だったのか?失敗した原因は何だったのか?を体系的に整理し、それをもとに講義を行う予定である。

明後日がシラバス提出の締め切り。

僕にとって、ここ1ヶ月は、そのことが最重要課題であり、一生懸命に内容を考えてきた。

講義は臨機応変に変更してもいいらしいが、シラバス(企画)の段階こそ、手を抜かずに対応したい。

「イノベーションには、他の仕事と同じように、才能や素地が必要である。しかし、イノベーションとは、あくまでも『意識的』且つ『集中的』な『仕事』である。『勤勉さ』と『持続性』、それに『献身』を必要とする」。

これもドラッカーから学んだことである。

Living on the Edge. 境界の上を歩く。

今月もブログの更新は滞りがち。

でも、ここ数日は密度の濃い時間を過ごしている。

日々想うことをすべて文章にするのを止めて、自分の中でじっくり「省察」することにしてみた。

今日はとあるアポがあり、かなり久しぶりに銀座の街を歩いた。MATSUYA GINZA の外壁がとてもモダンにリニュアルされ、女性誌の広告スペースとして使われていた。

インターネットだけでなく、こういうところにもイノベーションはあるということだ。

ところで先日、インボイス創業者の木村さんとドリームゲートの松谷さんと、ランチをご一緒する機会に恵まれた。

インボイスという会社や創業者の木村さんのことは数年前、同社が全株主に対してストックオプションを付与するというニュースで知った。

凄いことをされる方だなと思っていたが、実際にお会いした木村さんは、予想以上に「存在感」のある方だった。

でも、考えてみれば、それは当たり前のことで、そうでなければ、一代で、あのような会社を創ることは出来ないだろう。

木村さんからは色々なお話を伺ったが、その中で最も印象に残ったのは、「いいんですよ。もう一度、一からやれば。だって、最初は何も無かったんだから…」というひと言。

確かに、そのとおりだな…と思った。

また話は変わるが、今読んでいる本に「境界はエキサイティングだけれど、難しい場所なのだ…いつも変化し、境界にあり続けなければならない」と書いてあった。

なるほどな…と思った。

「境界(エッジ)」の両側は、断崖絶壁か急な斜面になっており、唯一安全な場所は「尾根の上」だけである。

Living on the Edge.

今にして思うと、イケテル名前である。