謹賀新年!Happy New Year 2024!

明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い申し上げます。

ここ10年は毎年元旦は実家に帰省し、裏磐梯のグランデコスノーリゾートでスキーをするのが恒例になっていたが、今年は子どもたちの「ダブル受験」があり、東京の自宅で過ごしている。

Facebookへの初投稿もゲレンデの写真を載せることができず、ChatGPT4 (DALLE-E) にpromptを出し、イラストを描いてもらった。英語でprompt を書いたせいか? 僕だけ西洋人っぽい顔になっているw。

他のイラストでもそうなのだが、どうもChatGPTは「算数」が苦手らしい。僕は「二人の子供たち」とスキーに行った絵とリクエストしたのだが、僕以外に「3人」の子供たちが描かれている。実は、最初に頼んだイラストは、リクエスト通り、僕と2人の子供たちが描かれていたのだが、2024 という数字を入れることを伝えるのを忘れており、もう一度、イラストを描いてもらったところ、子供が3人になっていた・・・。

でも、彼らの従兄弟(大学2年生)も一緒に行ったと思えば、悪くない。イラスト自体は、3人バージョンの方がイイ感じなので。

ところで、今年の抱負を書く前に、2023年を振り返っておくことにする。

With the three founders. Guy at left, Erez at my right side, Osnat at right at the old office in 2017.

僕にとって2023年は、兎にも角にも「The year of Infarm」だった。

2023年1月12日 (木)、日本時間18:00、Infarm 創業者の一人、CEOのErez との臨時のMTGがあった。

その翌週の火曜日に、彼との月イチの定例MTGが予定されていたにも関わらず、彼の秘書からメールがあり、1/12 (木) にMTGがセットされた。あと数日待てば話ができるにも関わらず、急遽、MTGがセットされたということは、つまり、悪いニュースだろうことは容易に想像がついた。

Zoom 越しに彼の顔が映し出され、新年の挨拶をした後、僕は「It must be bad news, right?(きっと悪い知らせなんだよね?)」と訊いたところ、「Yes. Unfortunately, the board decided to shutdown the Japan operation.(そうだ。取締役会が日本市場からの撤退を意思決定した。)」という返事だった。

When should we close our business?(いつまでに閉めればいい?)」と訊くと、「Yesterday.(昨日までに)」という単語が返って来た・・・。

その後のことはブログにも書いたので、ここで改めて書くことはしないが、Infarmに投資し、日本法人を設立、そして、約3年に渡って経営してきたことは、僕にとっては得難い経験になった。

野菜を生産しているとはいえ、収益構造的には「完全な製造業」であり、多額の「設備投資」が求められる事業で、累計「US$604.5 million(USD/¥142で計算すると約860億円!)」を資金調達をするような事業は初めてだった。もちろん、すべての資金調達は本国側で行っており、日本法人としてファイナンスしたわけではないが、そのダイナミズムは株主としても、日本法人の経営者としてもヒシヒシと感じていた。

Infarm はベルリン発祥で、日本を含めて「11ヵ国」で事業をしており、一時期、1,200人ほどの従業員がいた。ドイツ企業にも関わらず、ドイツ人比率は、おそらく2割程度しかいなかっただろうし、英語がネイティブなスタッフも同じく2割程度だったと思う。そして、国籍はなんと「50ヵ国」以上あった。当然、社内公用語は「英語」だった。

また、日本法人の経営者だった僕は、約20人ぐらいが参加する、四半期に1度の幹部会議に呼ばれていたが、彼らの国籍も10ヵ国ぐらいで構成されていた。

そのような「多様性と国際性」に富むスタートアップの経営陣の一角としての経験を踏まえると、日本のスタートアップは「モノクローム」に見える。創業者は全員、日本人、従業員もほぼ全員、日本人。株主も日本のVCや日本企業、顧客も日本企業 and/or 日本人という構造では、グローバルな事業を創るのは極めて困難だろう。

今のところ、世界第3位のGDP(市場)があるが故に、ガラパゴス化して成長していけるが、出生率や移民政策が大きく変わらない限り、わざわざブログに書くまでもなく、確実に市場は縮小していく。

ところで、昨年12月21日(木)、僕が株主の一人でもある「Musashino Valley」というStartup Studio 兼 Co-working spaceで、サンブリッジ時代から行ってきた「シリコンバレーツアー」の「拡大同窓会」なるイベントを行った。

新卒でアップルジャパンに就職し、10数年を経て「チカク」というスタートアップ(アップルでの経験を活かし、IoT端末を開発!)の創業者のカジケン(梶原健司さん)と、FinT というスタートアップの創業者で、ツアー参加当時は大学1年生だった大槻祐依さん、そして、Musashino Valley の運営企業の創業者で武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長の伊藤羊一さんを交えて、我々日本人にとってのシリコンバレーという存在の意味や影響力、そして、事業を立ち上げて成功させるために必要なことに関して、ざっくばらんにパネルトークを行った。

僕が最も印象に残っているのは、カジケンが説明してくれたアップルの「TOP100」と呼ばれていた(そう言っていたと思う)経営幹部を対象とした会議のことだ。

その会議に招集される経営幹部は、Steve Jobs がファーストネームを憶えている「100人」で、パソコンもiPhoneも取り上げられて、3日間、缶詰になり、会社(事業)の将来を議論していたという。

そこで、その100人は、Steve Jobs から、自分にとって「重要な10個のテーマ」を書き出すように言われ、それを発表した後、その内の「7個」は「捨てろ!」と指示されたという。

「選択と集中」。言うのは簡単だが、人間は「可能性があるものを捨てる」ことに躊躇するし、それには「勇気」が必要だ。ドラッカーのいう「劣後順位」というやつだ。

昨年、特に後半3ヶ月の僕は「欲張りすぎていた」と思う。次のビジネスやステージに進まなければいけないのは重々理解していながら、Infam日本法人の清算業務が終わっていなかったり、自分の年齢(昨年3月で還暦になった!)のことが気になったり、ある意味、ありがたい話だが、欧州のFoodTech系スタートアップから日本市場参入に関する相談があったり、投資先の資金調達を手伝ったりと、何だかんだと慌しくしており、焦っていたのだろう。

そんな時、カジケンの話は「胸に突き刺さった」。あのパネルトークはマジで勉強になった。

それからもうひとつ。昨日の紅白で久しぶりに「ルビーの指環 (音が出ます!)」を熱唱した「寺尾聰」は、なんと76歳!という事実を知り(今朝、とある知り合いのFB投稿で知った)、勇気をもらった。僕もあんな76歳になりたい!と思った。

そして、60代は、まだまだフルスロットルで行ける気がして来た!!

「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造(山口県岩国市)の桜井博志会長は、70代で米国に拠点を移し、さらなる挑戦をされるそうだし!

2024年は、予てから温めていた日本のスタートアップエコシステムに「多様性と国際性」をもたらすことを目的とした、あることを立ち上げようと思っている。

近いうちに、このブログで詳細を説明したい!

インスタカートのIPOは失敗か?

さすがに60年も生きていれば、自分に何ができて、何ができないか? は分かるようになる。否応にも・・・。

僕が尊敬するPeter F. Drucker はこういった。「50歳になり人生を振り返った時、何と憶えられたいか(どんな人だと認識されたいか)? その質問に答えられなかった場合、その人生は失敗だったということになる」

日本のスタートアップエコシステムは、グローバルのそれから良くも悪くも「Decoupling」されており、2023年上半期のスタートアップ投資額は昨年から減少しているものの、シリコンバレーと較べると遥かに良い状況のようだ。

グローバルでは相変わらず、厳しい状況が続いている。

Gene Teare at crunchbase のレポートによると2023年Q3のスタートアップへの投資額は「US$73B(約11兆円)」と、Q2より少し増えたが、前年同期(US$86B)から約15%ダウンとなっている。

細かく見てみると、レイターステージでは、半導体、AI、電気自動車、サステナビリティなどのスタートアップが大規模な資金調達を行ったため、前年同期比で10%近く、前四半期比で30%増加している。一方シードおよびアーリーステージでは、前年同期比で「減少」を続け、VC投資がまだ回復していないことを明確に示している。

また、注目すべきは、レイターステージの大型資金調達は、主に北米「以外」で見られていることだ。

アジアでは、半導体、電気自動車、再生可能エネルギー技術大型ラウンドにより、レイターステージ資金調達額前年比50%増と大きく伸びた。

欧州では、レイターステージ資金調達前四半期比倍増し、エネルギーと製造業の大型資金調達案件で前年同期比20%増となった。

さて、僕のブログを読んでくれる人の殆どは、標題のカタカナの説明は必要ないだろう。でも、そのIPOは失敗か? と僕が投げ掛けた質問の意図の解釈は人によって異なるだろう。

最初に僕の考えを書いておくと、僕には成功とも失敗とも評価できない。

但し、我々に、スタートアップとは何か? 投資とは何か? そして、イノベーションとは何か? を考えさせるIPOだと思う。

今日のブログは、Kyle Harrison という人が書いたブログをもとに書いている。かなりの長編だが、興味があったら是非、読んでみて欲しい。

※Source: Twitter (X) of Aswath Damodaran, an Economics Professor at NYU.

上表は、ファイナンスが専門のNYU教授、Aswath Damodaran氏のTwitter (X)に投稿されていたものだ。

Instacart(インスタカート)は2023年9月19日、US$9.9Bの評価額でナスダックに上場した。1ドル150円で計算すると1兆4,850億円になる。悪くない時価総額だ。但し、2021年に資金調達した際の評価額は「US$39B」。同じく150円/US$で計算すると、5兆8,500億円で評価されていたことになる

つまり、75%ディスカウントして、IPOしたということだ。

尚且つ、IPO時の売出し価格30ドルに対して、株価は42ドルまで上昇したものの、その後、株価は下がり続け、現在は25-26ドルで取引されている。時価総額は「US$7B (1兆500億円)」で、IPO時を割り込んでいる

Funding Storyを見てみよう。米国のベンチャーキャピタル(VC)は、S&P500の投資利回りよりも高いパフォーマンスを期待するし、VCに投資するLPも同様だろう。ということは、シリーズC以降の投資は「失敗」だったということになる。

何故なら、S&P500に投資していたら「12.31%」の利回りだったのに対して、IPO時の株価で計算すると、シリーズCの投資利回りは「10.6% (複利)」に留まっている。

それ以降の投資パフォーマンスは下がり続け、2020年のTender Offer Round の投資パフォーマンスは、マイナス13.65%(損失)だ。未公開時の最終ラウンド(シリーズI)に関しては、マイナス51.17%。つまり、投資金額の半分以下になってしまっている。

一方、シードおよびシリーズAで投資したVCは、それぞれ、55.02%、61.96%のリターンを上げている。

ここで注目して欲しいのは、セコイア(Sequoia)は、シリーズA、D、Iと、計3回のラウンドで投資している点だ。結果論だが、セコイアの計US$300M(約450億円)の投資は、US$1.4B(約2,100億円)と、約5倍になっている。但し、そのリターンの85%は、シリーズAの投資から得ている

もうひとつ、考えるべきことは、セコイアのリターンをもたらしたのは誰か? ということだ。

僕がVCから資金調達してスタートアップを経営していたのは2000年代前半であり、また、サンブリッジグローバルベンチャーズでスタートアップへの投資の仕事をしていたのは2010 年代半ばまでだ。その後は、日本のスタートアップエコシステムからは距離が生じている。

従って、日本のVC業界の現状を正確には理解していないが、シリコンバレーと日本では、VCの投資方針や業界構造、インセンティブが異なるように思う。

インスタカートのセコイアの事例のように、シリーズAで投資をし、その後、最後のラウンドまで付き合うケースも散見されるようだが、シリコンバレーでは、シード、アーリー、ミドル、レイターと、各ステージ毎に、メインとなるVCの顔ぶれが異なっている。セコイア、Andreessen Horowitz等のようなメガVCは、各ステージ毎にファンドを組成するが、Floodgate, First Round 等はシード&アーリーステージに特化している

では、それがどのようなメカニズムを生み出しているのか?

インスタカートの「フリーキャッシュフロー(現金収支)」が「ポジティブ」になったのは、2022年らしい。そして、今日に至るまでに「US$1.8B(約2,700億円)」を必要(燃焼)としている

言い方を変えるなら、セコイヤとAndreessen Horowitzのリターンは、US$1.7Bの儲からなかった投資家によってもたらされているということだ。

If a psycho with a commercial real estate business can raise $20B, then anyone can raise anything! But the sudden constraint on capital made VCs realize just how dependent they are on downstream capital.

上記の英文で、Kyle Harrison は、現状を皮肉交じりに指摘している。

要するに、WeWorkのような「ただの不動産ビジネス」が「US$20B(約3.5兆円)」も調達できるなら、誰もがいくらでも調達できる!と思うだろうということだ。そして、突然、世の中が正気を取り戻し、VC(に限らない)は、自分たちの投資は、その後の投資の判断に委ねられている(それ次第)ということに気付かされた

もうひとつ、インスタカートを例に取るなら、シリーズC以降の投資家がいなければ、セコイアやa16z (Andreessen Horowitz)はリターンを出せなかっただけでなく、世の中は変わらなかったということだ

さらに言えば、UberLyft といったインフラも、投資家の損失の上に成り立っている。今や、ベイエリアに出張した際に、UberやLyft無しの移動は考えられない。そのUberやLyftも「ロボタクシー(無人タクシー)」の出現によって、大きな影響を受けるだろう。

ドラッカーは、新しい産業が生まれた場合、個別には黒字化する事例もあるだろうが、その産業全体としてみると「15年は黒字化しない」と言っている。イノベーションは「長期」で見る必要があるということだ。

Infarm に限らず、Vertical Farming(LED/水耕栽培)業界を経験して、身を以て実感した。

そして、「教育」こそ、長期での判断が求められる。成果が出るのは、どんなに早くても10年後、現実的には20年という時間を要するだろう。「現世利益」を求める人には手掛けられない事業である。

アジアの経済革命が世界にもたらすもの。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(通称:武蔵野EMC =Entrepreneurship Musashino Campus)の創設に参加し、教授という仕事を仰せつかっていることで、The Economist 等、海外の主要メディアを購読する際、アカデミック料金で読めるというメリットがある。

何かと多忙にしており、当初の意気込みほどには読むことができずにいるが、それでも、日本のメディアでは取り上げないような貴重な情報を得ることができる。

当然だが、日本のメディアが取り上げるのは、日本語訳という投資に見合うPage View (PV) が稼げる、日本人が興味を持つと思われる記事に限定される。つまりは、多くの日本人にとっては興味の対象ではないが、その知識や事実を知るか、知らずにいるかでは大きな違いがあるような情報は提供してくれない、ということだ。

今では、DeepL等の優れもののお陰で、英語の記事やレポートを読むことのハードルが大きく下がったが、翻訳された内容を見て、これはオカシイぞ?と思うことも少なくない。なので、日本語訳した場合でも必ず、原文を読むようにしている。それでも、最初から原文を読むのと比較したら、圧倒的に時間を節約できる。

※Image source: McKinsey. Asia’s future is now. July 14th, 2019 Discussion Paper

さて、前置きが長くなったが、The Economist What Asia’s economic revolution means for the world. および、McKinsey Asia’s future is now. July 14th, 2019. Disuccion Paper そして、NYU教授のScott Galloway 氏のブログを読んで得た感想を書くことにする。

過去半世紀は日本、韓国、台湾、そして、最近は中国が、その恩恵に預かってきたわけだが、工業製品を安く生産し、裕福な欧米諸国に輸出することで貧困を脱出し、裕福になってきたのは今さら論じるまでもない。それが今、アジア地域の経済モデルは大きく変化し、アジア域内と世界に大きな影響を与えようとしている。

「1990年には、アジア貿易の46%が域内で行われていたが、2021年には、この数字は58%に上昇し、ヨーロッパに次いで最も統合された地域となった。アジアが豊かになり、企業が筋肉質(高収益)になるにつれて、投資の流れも、より「地域的」になっている

例えば、日本や韓国等による他のアジア諸国への海外直接投資は、2010年の48%から、2021年には、59%に上昇した(但し、シンガポールや香港への投資を除く)。

具体的な金額を見ると、2015年から2021年にかけて、中国はこの地域に年間平均55億ドル(今の為替レートで計算すると約8,250億円)の資金を提供している。対して、日本は40億ドル(同約6,000億円)、韓国は29億ドル(同約4,300億円)である。一方、欧米のシェアは低下した。

より重要なことは、地域内の貿易の中身が変わるということだ。現在のアジア域内貿易の多くは、最終製品を造るための「中間財」だが、アジア諸国の経済力が向上し、消費者の可処分所得が上がるに連れ、近隣諸国からより多くの「最終製品」を購入するようになるだろう。」The Economist の記事を要約

これは、マッキンゼーのレポートでも論じられている。

2000年当時、アジアは世界のGDP(購買力平価ベース)の3分の1弱を占めていたが、2040年には50%を超えようとしており、その時点までに、世界の総消費量の40%を占めるようになると予想されている。アジアは経済的な進歩だけでなく、寿命の延長や識字率の向上、インターネットの飛躍的な普及など、人間開発においても急速な進歩を遂げている(McKinsey, Asia’s future is now. July 14th, 2019. Discussion Paperより和訳)」。

これは「世界の重心」がアジアにシフトすることを意味しており、インドの台頭、BRICS+ another 6 countries等がその変化を表している。

The Economist が論じている「近隣諸国からより多くの「最終製品」を購入するようになるだろう」とう予測は、マッキンゼーのレポートでも解説されている。

As consumption rises, more of what gets made in these countries is now sold locally instead of being exported to the West. Over the decade from 2007 to 2017, China almost tripled its production of labor-intensive goods, from $3.1 trillion to $8.8 trillion. At the same time, the share of gross output China exports has dramatically decreased, from 15.5 percent to 8.3 percent. India has similarly been exporting a smaller share of its output over time. This implies that more goods are being consumed domestically rather than exported. Furthermore, as the region’s emerging economies develop new industrial capabilities and begin making more sophisticated products, they are becoming less reliant on foreign imports of both intermediate inputs and final goods. (McKinsey, Asia’s future is now. July 14th, 2019. Discussion Paper より抜粋)

アジア諸国での消費の増加に伴い、域内で生産されるものの多くは、欧米に輸出される代わりに、現地で販売されるようになった。2007年から2017年までの10年間で、中国は労働集約型商品の生産を3.1兆ドルから8.8兆ドルへとほぼ「3倍」に増やした。同時に、中国が輸出する総生産の割合は15.5%から「8.3%へと劇的に減少」した。インドも同様な傾向にある。つまり、より多くの「消費財」が輸出されるよりも「国内で消費されている」ことを意味している。さらに、アジアの新興国が新たな産業能力を発展させ、より洗練された製品を作り始めるにつれて、中間投入財も最終財も海外からの輸入に依存しなくなりつつある上記英文の和訳)。

アジアは既に「世界の工場」は卒業し、世界の「主要市場」へとその位置づけを変化させているということだ。

上記に関連することで、なるほど・・・と思うことがあった。

シリコンバレーに住む僕の知り合い(日本人ではない)が、彼の友人で、Tesla の中国現地法人の販売責任者と話した際、その方が「中国人はラグジュアリーな内装を好む。なので、スポーティなテスラを売るのに苦労している」と言っていたそうだ。

要するに、BYDの方が売れているということだ。産業財なら「性能と価格」が論点だが、消費財になると、その国や地域の「カルチャー」に合致したものである必要がある。いかにテスラであっても、中国人の好みに合わなければ売れない。

となると、今までは、高級ブランド(アパレル関連)は、LVMH、シャネル、カルティエ、クルマであれば、ドイツがメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、携帯端末であればアップルが iPhone日本は、SONY, ホンダ, トヨタ, Panasonic のように、世界のどこででも売れるような商品を開発し、販売してきたが、消費財、特に「工業製品」に関しては「世界ブランド」の市場も変わっていく可能性がある。

一方、アジアにおける政治的な統合はあり得ないだろう。ヨーロッパは2度の世界大戦を経て、そのような悲惨な歴史が繰り返されないようにという力学が働いたが、アジアにおいては、中国、インド、日本という、価値観も文化も経済システムも何もかも異なる大国が、ひとつの政治思想のもとに統合することは考えられない。

では、第二次世界大戦以降、アジア諸国に大きな影響力を持ってきた「アメリカ」はどうなるのか?

NYU教授のScotto Galloway 氏のブログに、シニカルだが、おもしろいファクトが書いてあった。

Galloway 氏らは80年代、「日本が40年前に軍事的にできなかったことを経済的にやっていると判断した」そうだ。

1980年代、コンピューターと自動車は未来のものであり、当時の日本は、それらをより速く、より良く、より安く作っていた。そして、日米貿易摩擦が起き、デトロイトの街では、日本車が叩き壊されている映像を見たのを憶えている。

そして、アメリカの識者たちは、日本のGDPがアメリカのそれの40%まで迫った時、それが100%になるのではないか?と恐れていたらしい。でも、それは、残念ながら起きなかった。

ところで、9/4のNew York Times のオピニオン欄に、America Is an Empire in Decline. That Doesn’t Mean It Has to Fall. (アメリカは衰退する帝国。だからといって滅びる必要はない)という、なんともセンセーショナルな見出しの記事が掲載されている。

Galloway 氏は「このような見出しはクリックの餌であり、私たちはまだ餌に食いつく: アメリカ人の4分の3が、わが国は構造的に衰退していると考えており、この夏の歌はわが国の終焉への賛歌なのだ。」と、自身のブログでコメントしている。

これはアメリカ社会に限らず、日本でも同様だ。ポジティブな見出しでは「Page View」は稼げない

悲観的なニュースの方がPVや視聴率を稼げるのは、アメリカ人に限らない。人間は、常に未来を心配しており、自分だけは「その悲惨な未来」から脱出したい!と思っており、どんな悲惨な未来が待っているのか?を「事前」に知りたくなるのだろう。と僕は思っている。

では、アメリカは本当に滅亡の道を歩んでいるのか?

ゴミ箱に捨ててしまって探せなかったが、あるメディアからのメールに「基軸通貨としてのドルの信頼が揺らいでいるのか?」というような見出しの記事があった。

当のアメリカでも「海外の中央銀行がドルへの関心を失っている」という主張があるらしい。では、事実はどうなのか?

世界の通貨準備高に占めるドルの割合が、過去20年間で70%から60%に低下したというものだ。これは重要なことのように聞こえるかもしれないが、その範囲は滑稽なほど小さい。拡大してみると、80年代には50%、30年前には40%だった。過去75年間におけるドルの基軸通貨としての地位を正確に表現するなら、それは……揺るぎない優位性である。20% (Euro) という数字では、次善の選択肢には遠く及ばない」。by Galloway 氏

それ以外に、圧倒的な軍事力スタートアップへの投資額インフレ率を見ても、少なくとも当面は、アメリカの優位性は揺るがないだろう。

但し、冒頭で説明したとおり、アジア地域の勃興により、世界の重心が変化していくのは間違いない。

アメリカが世界の警察官の役割を降りなかったら、ロシアはウクライナを侵攻しなかっただろうか?

規模では勝負しようがない日本が国際社会の中でリーダーシップを発揮し、若者に充分な教育投資ができ、未来に希望を持てる国でいる(なる?)には、どうすればいいか?

わざわざブログに書くまでもなく、甚だ微力ながら、僕なりに考えて、少しでも実行に移したい。

※イメージ写真は、McKinsey, Asia’s future is now. のカバーページ。

還暦少年とMidjourney.

子供の頃、母親とスーパーに行くと、偶然に出くわした彼女の知り合いとの会話で30分は待たされた。でも、当時の僕には長く感じられただけで、実際には5-10分くらいだったかもしれない。近所のスーパーに買物に行った時、二組の家族連れがいて、お母さん同士が楽しそうに会話をしている光景が目に留まり、産みの母のことを思い出した。

会社を解散するのは思ったよりも大変だった。過去形で書いたが、実はまだ終わっていない。今年4月30日付けで、Infarm 日本法人の解散登記をし、法的概念として、会社は解散されている。つまり、Infarmとして、日本で事業を行う主体は存在していない。但し、財務的に整理をするための「清算」という手続きを行う必要があり、まだその手続きが続いている。でも、その手続きの殆どは弁護士と税理士の方々が中心となって進めてくれており、HQ側とのやり取りは必要だが、僕が清算手続きの実務を行っているわけではない。

そんなことで、ここ数ヶ月、時間の自由ができたので、The Economist、Wall Street を購読し、Crunchbase等を含めて、可能な限り、海外のメディアを読むようにしている。下図はの今朝 (2023年8月27日 10:15 am JST現在)の時点で、The Economist 購読者に最も読まれた記事TOP5。

それで感じるのは、それらのメディアには、日本のことは殆ど登場しない、ということだ。ここ最近のエコノミストの主な記事は、ウクライナ情勢、プーチン、プリコジン、中国、習近平、アメリカ大統領選、米国経済、地球温暖化等である。今日のニュースレターに珍しく日本の記事があったが、性風俗産業に関する新しい規制に関するものだ。政治でも経済の話でもない。

仕事柄、シリコンバレーに関する記事を意識的に読んでいるが、スタートアップへの投資に急ブレーキが掛かる一方、AIに関しては、バブルの様相を呈していると言っても過言ではない。

但し、AIはスタートアップが取り組める対象ではない。ChatGPTを運営するOpen AI はマイクロソフトから1兆円以上もの投資を受け、対抗馬のひとつ、ディープマインドの共同創設者ムスタファ・スレイマン氏らが2022年に設立した「Inflectin AI」には、Rein Hoffman も出資者に名前を連ね、$1.3B(現在の為替レートで約1,900億円)を調達している。Computing Powerに莫大な費用を必要とし、スタートアップが数億円の資金で始められるビジネスではない。

一方、together.ai というスタートアップが、オープンソースのAI 構築をサポートするプラットフォームとCould サービスをリリースした。

特定のバーティカルに特化したAIサービスの開発が促進され、SaaSならぬ「AI as a Service =AaaS」の時代が来るように思う。

ところで先日、INITIALの「2023上半期 Japan Startup Finance」をもとにしたウェビナーを拝聴した。詳しくは、同社のレポート(無料)をダウンロードしていただきたいが、印象に残ったのは以下の3点。

(ソース:INITAIL)

1つ目は、シリコンバレーに遅れること約1年、日本でも特にレイターステージにおいて、スタートアップへの投資が急減速したこと。2022年上半期は「4,160億円」がスタートアップに投資されていたが、2023年上半期は「3,314億円(前年同期比:約80%)」に減少

2つ目は、資金調達額上位からも評価額ランキングからも、SaaS スタートアップの存在感が薄れてきたこと。

3つ目は、2つ目とセットで語る必要があるが、DeepTech スタートアップが増えてきていること。

要約すれは、ビットバレーから約25年に渡り続いてきた「インターネット」スタートアップ(日本語でいうネットベンチャー)による時代は終わりを迎えているということだ。

スタートアップ=DeepTechスタートアップの時代になるだろう。つまりは、起業家だけでなく、VCをはじめとした投資家を含めて、スタートアップエコシステムを構成する要素が大きく変わっていくだろう。

尚、INITIALのリサーチ対象は「日本のスタートアップの資金調達」であり、そのことには触れていないが、この先、日本のスタートアップおよびスタートアップエコシステムが成長していくには、東証の新興市場(旧マザーズ)に上場することを主要なエグジット(言葉は出口だが、実際はそこからがスタート)とするだけでは、確実に限界が来るだろう。

今のところ、世界第3位のGDP(マーケット)があり、スタートアップというステージであれば充分な成長が可能である。但し、2060年には、日本のGDPは「中国の1/10」になる。いつまでも「国内市場」だけを対象としているなら、スタートアップを語る以前に、日本の存在意義は増々薄れていくのは間違いない。安全保障にも支障を来すはずだ。

最近はそのようなことを口にする人も少なくなってきたが、戦後80年近く経つにも関わらず、未だに実現できていない「Next SONY, Honda」を生み出すにはどうすれば良いか? という「終わっていない宿題」に正面から取り組む必要がある。

僕なりの考えがあるが、またの機会に披瀝するとしよう。

さて、明日(8/27)から、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(通称:武蔵野EMC=Entrepreneurship Musashino Campus)の2年生約30人を連れて、シリコンバレーに行く。主に、僕の投資先のファウンダーや知り合いの起業家、ベンチャーキャピタリストに話をしてもらう予定だ。下の写真は昨年、武蔵野大学EMCとして実施した記念すべき第一回目の模様(投資先のMilesの新オフィスにて)。

僕の記憶が正しければ、サンブリッジ時代から数えて、今年は記念すべき「10回目」のシリコンバレーツアーである

ところで、今回のアイキャッチ画像は、僕がprompt を出し、Midjourney に描いてもらったものだ。生物学的にはだいぶ年を取ってしまったが、気持ちは、EMCの学生(20-21歳)に負けないつもりだ。

おっと、大事なことを忘れるところだった。何年ぶりかでドリームビジョンのウェブサイトをリニューアルした。そして、ブログサイトの「タイトル」と「ドメイン」を新しくした

今後の展開に乞うご期待!

何に資金を投下するべきか?

紀ノ国屋、サミット、コクヨの各店舗からファーミングユニットを撤去してから、そろそろ3ヶ月。Infarm 日本法人を解散し、代表取締役社長を退任してから今月末で1ヶ月になる。法的には「弁済禁止期間中」という期間にあり、まだ「清算会社」としての存在は残っている。

とは言え、実務的には終了しており、次の展開について、毎日、あれこれ思考を巡らせている。

以前に書いたブログでも紹介したが、Precursor Ventures の創業者 Charles Hudson のNews Letter は、これからの人生でやりたいことを考える上で、示唆に富んでいる。

Charles は、Pre-Seed ステージを資金調達額「$1M(¥130/$=1.3億円)」以下と定義しており、Seedステージ、つまり、over $1Mのファイナンスができた投資先と出来なかった投資先では、1ヶ月の「バーンレート(資金燃焼額)」がどう異なるか?を分析している。以下はそのグラフである。

2017年から2022年を比較し、その年にSeedファイナンスをしたスタートアップと、できなかったしたスタートアップを比較したところ、Seedファイナンスが出来た投資先の方が、1ヶ月のバーンレートが高かった。つまり、より資金を使っていたということだ。

ここで注意したいのは、資金をより多く使えば、Seed ファイナンスにたどり着けるという単純な話ではない、ということだ。

データが示していることは、彼が日頃の観察から得ていた感触と合致しているそうだが、Seed ファイナンスに成功した投資先は、Product-Market-Fit(PMF)に至ることができており、自信を持って顧客獲得のための先行投資(先行投資)ができているのだろうと分析している。結果として、Seedファイナンスができなかった投資先よりもバーンレートが増えているということだ。

Pre-Seed スタートアップ創業者の仕事は、投資から調達した資金を使って、PMFを実現するための「Insight(示唆)」を獲得することだ (by Charles)。

当たり前だが、いくら使ったか?ではなく、「何にお金を使ったか?」が重要ということだ。

彼のニュースレターを読んで僕が学んだことは、シード&アーリーステージという、極めて属人的な判断や嗅覚が求められる領域においても「分析(データ化)」と「科学的アプローチ」が必要ということだ。

DreamVision portfolio performance as of 2019

少々振るいデータ(2019年現在)だが、サンブリッジ時代に組成し、ドリームビジョンで引き継いで運営している2つの投資ビークルとドリームビジョンからの直接投資の計28社に関しては、「約8割」が次の資金調達を実現できている。また、生存確率は93%と、自画自賛だが投資パフォーマンスはかなり良い。

問題は、次のラウンドに行けなかった6社は、次のラウンドに進めたスタートアップと何が異なるのか? ということだ。今から当時のデータを確認できるか? は分からないが、出来る範囲で分析してみよう。

僕は約20年以上もの間、インターネット関連業界で仕事をしてきたが、ソースコードは書けないし、エクセルもまったくダメ。でも、嗅覚には自信があることもあり、自分の直観と運の良さに甘えて来たが、これからの人生で僕がやりたいことを実現するには、上述のとおり、「分析」と「科学的アプローチ」が必要だ。

つまり、数値化が得意で、エクセル操作スキルが高く、ちょっとしたコードなら書ける人が必要だ。そして、そこそこ英語ができる必要がある。

そういう人を募集できるように、まずは、ピッチデックを作らないと!

ユニコーンは絶滅するのか?

全世界に衝撃をもたらしたシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻から約1か月。米金融当局が、金融システム不安を未然に防ぐべく、預金の全額保護に動いたことで最悪の結果は免れたが、シリコンバレーやスタートアップの資金調達環境にどのような影響が出ているのか? そして、それは今後、スタートアップ・エコシステムにどのような影響を、どのぐらいの期間に渡って与えるのか?

現地時間で先週水曜日 (4/5)、crunchbase news に「Global VC funding falls dramatically across all stages in Rocky Q1, despite massive OpenAI and Stripe deals」という記事が掲載された。

実はこの記事の著者 Gene Teare とは直接の知り合いだ。知的でとても素敵な方である。サンブリッジ時代に知り合い、その後も親しくさせてもらっており、何社かCo-Investment もしている、TechCrunch 共同創業者 Keith Teare の奥さんだ。

本題とは少し離れるが、彼女が書いた記事を読みながら思ったことを紹介したい。

彼女は、南アフリカ出身で、Keith との結婚により、一緒にシリコンバレーに移住してきた。知り合ったのはロンドンだったと聞いている。Keithはイギリス人で、二人がシリコンバレーに移住して来てから20数年になる。

毎年、クリスマスシーズンには、家族全員で遠く離れた南アフリカに里帰りしているようだが、異国の地でもこうして仕事が出来ているのは、KeithもGeneも英語が母国語なのが大きいと思う。

もちろん、英語が母国語ではなくても、日本人の知り合いを含めて、異国の地で仕事をしている人はたくさんいるが、それでも、英語が母国語ということのアドバンテージは大きい。意思の疎通でハンディキャップが無いわけで、英語圏への移住であれば、我々日本人と比較して、ハードルは極めて低いだろう。

英語が母国語に生まれたか? あるいは、何らかの理由で、ネイティブと遜色の無いレベルの英語が話せるかどうかは、その人の人生を大きく左右する。

そういう僕自身、中学生の時から、いつかは海外に住んでみたいと思っていたにも関わらず、目先のことに囚われて、未だに日本を出たことがない。英語も自分が思い描いていたレベルには程遠い。

さて、ここからは本題。彼女が書いた記事の内容を紹介したい。

Global VC funding と言っているので、米国のみならず、crunchbaseが把握している限り、全世界でのVCによるスタートアップへの投資金額のことだと理解しているが、2023年Q1のスタートアップ投資は$76B (約10兆円:¥130/$で計算。以下同様)対前年比で「53%」の減少 (2022年Q1は「$162B (約21兆円)」) ということだ。

但し、そこには、OpenAI ($10B。大半がマイクロソフトによる投資)Stripe ($6.5B) への投資(計$16.5B)が含まれており、それを除くと約$50Bとなり、2022年Q1の半分以下になる。極めて大幅な落ち込みである。

また、Every funding stage last quarter was down 44%-54% year over year, a clear signal that the slowdown is not confined to late-stage funding. と説明されており、Late Stage だけでなく、シードステージを含む、すべてのステージで対前年比:44-54%ダウンということで、スタートアップ投資は半減した。

冒頭に触れたシリコンバレーバンクの経営破綻は、今後のスタートアップ投資に大きな影響を与えるだろう。SVBの顧客には、売上が$5M(約6.5億円)未満の20,000社を超えるスタートアップがいたらしく、彼らの預金(大半がVCから調達した資金)が保護されなかったとしたら、どうなっていたか? 仮に、1社平均100人の従業員がいたとしたら合計200万人、50人だったとしても100万人が犠牲になっていた。

尚且つ、彼女の記事によると、SVBの顧客は米国のスタートアップに限らず、米国のベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をした国外のスタートアップも多く存在したという。

実は、SVB破綻(その時点では破綻懸念)のニュースを聞いたのは、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(通称:武蔵野EMC)の仕事で米国出張中、SXSWに参加するためのオースティン滞在中だった。

尚且つ、投資先のAnyRoad, CEO & Co-founder の Jonathan Yaffe が、SXSWにパネリストの一人として呼ばれており、現地で話を聞いた。

AnyRoad以外にも、シリコンバレーの投資先には、ModuleQ, Miles等があり、ここには詳細は書けないが、SVB経営破綻のニュースが出てからの72時間、創業者たちがどのような状況にあったかは言うまでもない。事なきを得て、僕もホットした。

ところで、2023年Q1の投資が大きく減少したものの、VCに投資資金が無かった訳ではない。むしろ、Venture Capital (VC) には、業界で言うところの「Dry Powder(投資資金)」は潤沢にあった。

James Ephrati, Lightspeed Venture Partners の試算によると、2022年12月末時点のVCの保有資金は「$580B(約75兆円!)」に上るという。その額は、2021年と同じ額らしいが、前のめりに投資をしていた2021年とは打って変わって、2022年は極めて慎重な投資姿勢に転じている。

cruncbase

詳細な説明は割愛するが、以下のとおり、各ステージ毎のグラフを載せておく。

crunchbase

In the first quarter of 2023, seed funding totaled $6.9 billion, down 44% year over year — a signal that even at the earliest funding stages, investors are pulling back.

2023年Q1の投資額は「$6.9B」で、前年同期比で44%ダウンということだが、2022年上半期は、他のステージが減速する中においても、前年同期比で投資金額は増加していたそうだ。2022年Q4になって初めて、前年同期比で25%の減少となった。

また、2008年のリーマンショック当時もVCによるスタートアップへの投資、特にLate-stageは冷え込んだが、Seed&Early-stage への投資は大きな減少を見せず、Square, Airbnb, WhatsApp, Slack 等は、その頃に創業している。

今回は、全ステージにおいてスタートアップ投資に急ブレーキが掛かっているが、OpenAI(ChatGPT)に代表される Large Language Model のAI スタートアップには、引き続き、投資が行われている。

Early-stage funding totaled $25.6 billion in Q1, down 54% year over year.  投資額$25.6B (約3.3兆円)。対前年比で、54%のダウン!

Late-stage funding totaled $43 billion, a dramatic fall from $93 billion in Q1 2022, but up from $34 billion in Q4.

2022年Q1の$93B (約12兆円) から、2023年Q1は「$43B (約5.6兆円)」と半減以下にダウン!

The billions of dollars raised by OpenAI and Stripe made up 22% of all venture capital raised this past quarter, and 38% of late-stage financings.

さらに言うと、2023年Q1のVC投資額の22%、Late-stage 投資額の38%が、Open AIStripe の2社に投資されている。両社への投資額 $16.5B (約2.1兆円)を除くと、2023年Q1のLate-stageへの投資額は「$26.5B (約3.4兆円)」で、2022年Q4を下回る。

では、このVCによるスタートアップ投資冬の時代は、いつまで続くのだろうか?

次回は僕なりの考察を書いてみたい。

いよいよ米国へご出発です。

先週から、お世話になってきた店舗から我々のファーミングユニットの撤去作業を始めた。Infarm の野菜を楽しみにしてくれていた固定客の方もいらしたようで、日本で事業を開始し、僅か2年ではあったが、Infarm の日本市場からの撤退を惜しんで下さっている方々もいるという声を聞き、とても嬉しく、そして、申し訳なく思っている。

そんなことで連日、深夜仕事の日々が続いており、50代最終コーナーを走っている人間には、体力的に厳しく、昼間の集中力を保つのが難しい。

実は、今までの生き方を改めたいと思っている。

実際、仕事に関しては、3月末で、Infarm 日本法人を解散するわけで、大きく変わるのは言うまでもない。

二人の子どもたちは、これから益々お金が掛かる年齢に差し掛かり、妻はこの先のことをとても心配している。僕も心配じゃないと言えば嘘になるが、何とかなると思っている。

Infarm の店内ファームの撤去作業に話を戻すと、行き帰りのクルマの中で、That Was The Week というポッドキャストを聴いている。

知己を得たとまで言うと烏滸がましいかもしれないが、サンブリッジの仕事で知り合い、10年以上の付き合いになる、TechCrunch 共同創業者のKeith Teare 氏が、彼の友人 Andrew Keen 氏と対談形式で毎週金曜日に行っているセッションだ。シリコンバレーやテクノロジー業界の今がよく分かり、とても勉強になる。

先日のブログに書いた長男との関係は、思っていた以上に、僕の精神状態に影響を与えている。それに加えて、ファーミングユニットの撤去が始まり、物理的に、そして、否応なしに、苦労して設置したファーミングユニットを解体する光景を見ることになるせいか、精神の平穏を保つのが難しい。

昨晩は紀ノ国屋の西荻窪駅店での撤去があった。西荻窪の街は、風情があっていい。チェーン店ではなく、個人経営の個性豊かな飲食店が軒を並べている。

撤去の帰りは、Keithのポッドキャストを聴く気になれず、YouTubeを開けたところ、一時保存リストの下に、Christofer Cross の Sailing という曲のサムネイルがあった。

僕は歌詞のある曲は必ず、どんな歌詞なのか?どんな意味なのか?を確認したい人で、Google で検索してみた。ChatGPTではなく。

すると、以前にも見つけたことのある「およげ!対訳くん」という洋楽の和訳を書いている方のブログに、Sailing という曲ができた背景と歌詞、そして、彼なりの解釈が説明してあった。

僕は仕事上のことは英語で講演したり、ブログを書いたりすることができるようになったが、歌詞の背景やそこに込められた意味を理解するまでの英語力はない。

Wikipediaによると、Christofer Cross が高校生の頃、感情面で苦しんでいた時、年長の友人であったアル・グラスコック (Al Glasscock)に、セーリングに連れて行ってもらっていたことに着想を得て書いた曲らしい。

「およげ対訳くん」に書いてある和訳を読みながら、「たしかに、そうかもね・・・」と思えて、少し気が楽になった。

ところで先程、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(通称:武蔵野 EMC=Entrepreneurship Musashino Campus)の教授会(Zoom)の最中に、一通の簡易書留が届いた。

This photo was taken by myself. At The Venture Cafe in CIC. Sep 24th, 2014

武蔵野EMCの仕事で、3/6 (火) から一週間、ボストンとオースティン(SXSW)に行くことになっている。その必要書類だった。

「いよいよ米国へご出発です」。

旅行代理店の方からの送り状には、そう書いてあった。

ボストンにはサンブリッジ時代、Innovation Weekend というピッチイベントを主催するため、2度ほど行ったことがあるが、オースティンもSXSWも初めてだ。

2006年に創業したドリームビジョンが上手く行かず、晴耕雨読ならぬ、晴「読」雨読の日々を送っていた時、小川孔輔先生から電話をいただき、翌年から法政大学経営大学院(MBA)で教えることになった。

その翌年には、2年半ぶりに Allen Miner と再会し、サンブリッジの仕事をすることになり、Keith をはじめとして、シリコンバレーの人たちとの交流が始まった。

サンブリッジ時代に受託していた大阪市の仕事では、ロンドン、ベルリンとも縁ができ、ベルリンに関しては、ベルリン州政府が行うアジアのスタートアップエコシステムとの接点づくりの「アンバサダー」なる役職も仰せつかることになった。

幾多の失敗をしてきているが、僕は機会に恵まれている。

人生は、簡単じゃない。でも、生きていることは、それだけで素晴らしい。

そう思える人生を送れている僕は、幸せな人間だ。