集英社と日本の将来

1996年の秋。こうしてキーボードを打つと、何と今から10年前ということに気づくが、最初の会社を経営していた時、ある化粧品会社の広告製作の仕事をしたことがある。会社を設立して6年目の時だった。

その仕事は、ある商品の広告を製作し、それを掲載するメディアプラン(雑誌のみ)を立案して、実際に媒体を購入し広告を掲載することだった。

僕の会社は、広告代理店ではなかったので出版社との取引はなく、知り合いの紹介で出版社に強いパイプを持つ広告代理店を紹介してもらい、その会社経由で「広告枠」を買ってもらった。但し、広告原稿を入稿したり、色校を取りに行ったり戻したりという仕事は、僕らが行った。そのため、僕か僕の妻かアルバイトが、地下鉄に乗って集英社や小学館等の出版社に毎日のように通っていた。

実は、妻がボランティアをしている団体が九段下にあり、昨日(土曜日)、彼女を車で送っていった際に、出版社が並ぶ神保町のあたりを通り過ぎた。懐かしい想い出が脳裏をかすめた。

と同時に僕の頭を過ったのは、「大学生の人気就職ランキング」だ。

僕が大学生の頃は、一部の学生の間では「マスコミ」が根強い人気を集めていた。

そういう僕も、テレビ局、出版社、広告代理店などを受けてみたりした。実際には、そんなに行きたいというわけではなかったのだが、どうしても、製造業や金融機関、あるいはサービス業等のいわゆる「フツーの大企業(組織)」で働くということがイメージできなかったのだ。

当時はバブル経済前夜とも言える時代だったが、まだまだ、「会社=自由がない、組織の歯車」という感じがしていて、中学の頃からバンドをやっていた僕には、「就職=自分の個性を諦める」という図式としか思えず、消去法で「マスコミ=まだまし」という、なんともモラトリアムな考えしか持っていなかった。

因みに、Googleで「就職ランキング」と検索してみたところ、ダイヤモンド・ビッグ&リード調べ(2006年1月リリース)の「大学生が選んだ就職先人気企業ランキング2006」なるものが出てきた。

それによると、文系男子は、1位:三井物産、2位:三菱東京UFJ銀行、3位:三菱商事、理系男子は、1位:日立製作所、2位:松下電器産業、3位:野村総合研究所、文系女子は、1位:東京海上日動火災保険、2位:三井物産、3位:ANA、理系女子は、1位:資生堂、2位:サントリー、3位:日立製作所 という結果だった。

因みに、データソース(毎日コミュニケーションズ)は異なるが、僕が社会に出た1986年4月(1985年度)のデータを見ると、文系男子は、1位:地方公務員、2位:住友銀行、3位:国家公務員、理系男子は、1位:NEC、2位:富士通、3位:日立製作所 となっていた。

理系はともかく、文系の結果には驚いた。今以上に「保守的」な時代だったということだろう。

因みに、2006年に関しては、楽天が「圏外→92位」、サイバーエージェントが「圏外→116位」とランクインしてきているそうである。

しかし、僕の想像とはまったくもって異なる結果だった。

学生達にとってベンチャー企業という選択肢は、まだまだ遠い「圏外」ということなのだろう。寂しさを感じる。

そして、それが、日本という国の「将来」を表しているような気がするのは、僕だけだろうか?