50代を笑って迎えられるように。

もう何年もお会いしていないが、僕が最初の会社を経営していた頃、とてもお世話になっていた八木さんというグラフィック・デザイナーの方がいる。

八木さんには、ふたりの男の子がいた。

上の子は穏やかな性格だったが、下の子は八木さんによく似て、気性の激しい、とても男の子らしい性格をしていた。

あの頃、八木さんが言っていたことで、今もよく覚えていることがある。

「むしろ、子供からたくさんもらっていますよ」。八木さんはそう言っていた。

八木さんはご自分のデザイン事務所を経営されており、忙しくても、暇でも、いずれにしても大変であり、でも、家に帰って子供の寝顔を見ると、その日の疲れは癒されてしまう、と言っていた。

そのことの意味が、今、ようやく分かったような気がする。

子供のことで言えば、僕がインタースコープを退任する時、筆頭株主であるデジタルガレージの林さんに挨拶に行った際に、林さんから「子供は癒されるだろう」と言われたことも新鮮だった。あの林さんから、そういう言葉を聞くとは思ってもいなかった。因みに、林さんは子供がふたりいらして、上(男の子)の方は既に大学生になっている。面倒見の良い父親のようである。

最近、思うように仕事が前に進まず、心が折れそうになることがある。そんな僕にとって、悠生はとても大きな存在である。

今日は妻が熱を出しており、僕が悠生をお風呂にいれるために早く帰宅したが、僕が帰ってきたことを知ると、一目散にハイハイして僕のところにやってくる。

子供がいなくても、最初の会社(20代)やインタースコープを立ち上げた時(30代)のように毎日深夜まで働くことは体力的に無理だと思うが、妻の何分の一程度ではあるが、悠生の面倒を看つつ、会社を軌道に乗せていくというのは、思っていた以上に大変だ。並大抵のことではない。

その一方、今の僕には彼がいない生活は考えられない。

こんな生活や心境は人生で初めてのことである。

まだまだ努力が足りない自分を自分で叱りつつ、励ましつつ、50代を笑って迎えられるように。