小田急百貨店

僕の父親は、僕の出身地である福島県郡山市にある、とある総合病院の事務長をしていた。

その病院は、従業員が2,000人規模の大きな病院で、東大や女子医大等の医学部の教授に週に何回か診察に来てもらっていたり、その交渉事だったりで、定期的に東京に出張に来ていた。

その父は、僕が大学を卒業した翌年、僕が24才になった5日後、55歳の若さで亡くなった。

父は生前、出張で東京に来る時は必ず、前もって連絡をくれ、スケジュールに余裕がある時は、当時、弟と住んでいた下北沢のアパートに泊まりに来た。余裕がない時でも、どこかで待ち合わせて、夕食に誘ってくれた。

僕が下北沢に住んでいたことと、父の帰りのことを考えてか、新宿で食事をすることが多かった。

今朝は、新宿でアポがあり、その帰りに小田急百貨店に寄り、エレベーターに乗ったのだが、小田急百貨店だったか、My City だったかで食事をした、かれこれ20年も前のことを「ふっ」と思い出した。

父が、どれだけ僕や僕ら兄弟のことを心配し、愛情を注いでくれていたかが、悠生が生まれてからは、より一層、分かるようになっており、一瞬、胸が詰まった。

今まで感じたことのないほど、亡くなった父親にもう一度会いたいと思ったが、それは2度と適わないことを考えると、何とも言えない感情が沸き上がって来た。

「親の心、子知らず」というが、何とも親不孝な子供だった。

悠生を育てていくいことで、その罪滅ぼしができたらと思う。