「初めての起業」。

「初めて」のことというのは、それが何であっても独特な「高揚」がある。

1993年、初めて設立した会社(クリードエクセキュート)の3年目だったが、クレジットカード会社のポイント交換の商品提案&提供の仕事が取れた。

僕らが提案した商品は「ハンカチ」で、ハンカチメーカーとしては老舗の「川辺」という会社の商品だった。

その仕事をするにあたって、ひとつ、どうしても解決しなければいけない問題があった。

「川辺」から商品を仕入れなければいけなかった。つまり、売ってもらう必要があった。

最初の会社は資本金1,000万円で吹けば飛ぶような会社であり、大した売上もなく、大企業の「川辺」にとっては「不良債権」化するリスクがある会社だった。

僕らは超狭き門の「ポイント交換の商品提供」という商売を取ったまではよかったが、商品の「安定供給」ができなければ、その仕事はパーになる。何としてでも「川辺」に「うん」と言ってもらう必要があった。

そこで僕らは、カード会社の担当者(実際には責任者の決済)に掛け合って、僕らにその仕事を出すという「書面」を出してもらい、川辺と僕らの会社とで結ぶ契約書にそのコピーをつけて、何とか通してもらった。

その時、川辺の人達は、小西さんという部長(当時)を含めて3人で、僕らの会社を訪問(人物評価)に来た。

後から聞いた話しでは、小西さんは、僕らと取引をするつもりだったらしいが、もうひとりの方(別のラインの部長か次長の方だったと思う)が反対(心配)していて、その時の交渉の会議では、一瞬、口論になりかけた。

いつもは温厚な堀水(現在はクリードエクセキュートから分社化した会社の社長兼ドリームビジョンの監査役)が、自分が取ってきた仕事を何としても成立させたかったのだろうが、僕からみても、堀水の言い方が悪いよなと思うことを発言したことがきっかけだった。

何とか僕がその場を丸く収めて川辺の方々はお帰りになられたのだが、小西さんはその帰り道に「僕はあの人達と取引しますよ」と反対気味だった方に言ったらしい。

後日談を聞いた時、僕はとても嬉しかったが、このエントリーを書いている今は、そのことの「意味」が痛いほど分かる。

僕らのような「カネ」も「人」も「大した能力」もなく、あるのは「心意気」だけのベンチャー企業と「リスク」を取って「取引」をしようと言ってくれる大企業があってこそ、ベンチャー企業は成長できるということが、今になって初めて身を以て分かった気がする。

「夢=新しい社会的価値」の創造(実現)には、そういう理解者が必要不可欠である。

それが、エンジェル(個人投資家)であり、川辺の小西さんのような「起業家精神に溢れる大企業の方」であると思う。

小西さんとは、もう10年以上お会いしていないが、あの時のお礼方々、久方ぶりに表敬訪問をさせて頂きたいと思っている。

追伸:これも備忘録だが、僕の人生を変えたと言ってもいい人がいる。是非、彼のことも紹介したい。