「決断力の本質」 〜 羽生善治さんに学ぶ。〜

リクルート出身の安田佳生氏が経営する、「Y-CUBE」という、とてもユニークな会社がある。

「組織力」を高めるには、特にその企業独自の「カルチャー」を醸成するには「新卒採用が効果的」だという主張に基づき、中小企業にフォーカスして「新卒採用」のコンサルティングを行ってい���。

先週金曜日は、そのY-CUBE主催のセミナーに出席し、プロ棋士の羽生善治さんのお話を拝聴した。

実は、ここのところ睡眠不足が続いており、羽生さんのお話の最中、失礼にも居眠りをしてしまったが、ポイントとなる話しは聴くことができた。

講演のテーマは、「決断力の本質」。

彼の話は、決断力の本質を結論づけるものではなかったが、大きな論点は「直観力」「大局観」「ミス」「経験の価値」だった。

将棋の手は、無数にある。それを一手一手検討していたのでは、いくら時間があっても足りないし、集中力も体力にも限界がある。そこで必要になるのが「直観」であり、「大局観」である。

では、「直観」と「大局観」とは、どう異なるのか?

将棋に限らず、若い頃というのは「勢い」にまかせて、それが功を奏することが多々あるが、それらを含めて「直観」の有無が勝敗を分けることがある。

羽生さんは、「直観は『7割』当たっているが、それは、同時に『3割』間違っていることを示しており、直観だけに頼っていては敗北してしまう」と言っている。

そこで、必要となるのが、「大局観」だという。

「直観」は、才能やセンスがあれば、若くても働くが、「大局観」は、長年の経験に裏付けられたものがなければ働かないと羽生さんは言う。

若い頃に対戦した「大山名人」(と言っていたと思う)は、その時の羽生さん(19才)から見ると、失礼ながらどう考えてもそれほど真剣に考えているようには見えなかったが、ズバッと鋭い手を打ってきたそうである。

次に「ミス」の話し。これは、僕の好きなゴルフにも通ずると思った。

羽生さんでも「ミス」はするらしい。では、ミスによる悪影響とは何か?であるが、羽生さんは、こう仰っていた。

ひとつは「動揺」。もうひとつは、そのミスを取り返そうとして「無理なことをする」こと。つまり、「ミスがミスを呼ぶ」こと。

ゴルフで言えば、林に入れたら、状況にもよるが、基本は潔くフェアウエイに出す。それが大切。

さて、最後は「経験の意味」。これには、とても頷けるものがあった。

羽生さん曰く、「経験から得た『知識』というのは、殆ど使い物にならない。但し、『経験』があると、このぐらいのことを達成(習得)するには、このぐらいの時間や困難が必要だということが分かるので、その途中の焦りやプレッシャーに負けないで済む」。

これは、本当にそう思う。

才能があっても途中で挫折して行く若い人は、きっと才能があるが故、自分が期待する(出来るであろう)アウトプットと今の自分とのギャップなり、その途中の時間に絶えられず、精神的に参ってしまうのだろう。

もうひとつ、これは講演後の質問に対す答えだが、「リスク」というものに対する羽生さんの考えを述べられていた。

質問をされた方は、羽生さんがご自身の著書で仰っている「直観は7割当たっている」ということを引き合いに出し、「リスク」というものに対する考え方を尋ねていた。

それに対して羽生さんは、「直観は3割間違っているので、直観だけを信じて勝負を続けると必ず負けてしまいます。かと言って、定石だけを繰り返すことは誰でも出来ることであり、それはそれでジリ貧になっていくのも目に見えています。ですので、少しずつ、自分の立ち位置を変えていき、気がついたら、まったく異なる立ち位置に立っていた、とするのが良いように思います」と答えていた。

とても勉強になる1時間だった。

追伸:これは余談だが、羽生さんには、マネックスの松本さんに感じたものと同じようなものを感じた。凡人には到底イメージできない世界で生きている。異次元で生きている人と言ってもいい。まさしく「天才」である。

備忘録:「コンパクトにする(短くする)」「プレッシャー」