診察室の会話。

今年に入ってから体調不良が続いていたが、ようやく調子が良くなってきた矢先に、今度は「右股関節」を痛めてしまった。

3連休に郡山に帰省してた頃から左腰に張りがあり、左右両方の股関節(前方)が痛かったのだが、昨日の夕方、急に「右股関節」の横が痛くなり、殆ど歩けない状態になってしまった。

首や背中を痛めた時にお世話になっているスポーツトレーナーの先生のところに行き、針治療をしてもらったが効き目無し。今朝は近所の病院に行き、紹介状を書いてもらって日赤医療センターの整形外科に行ってきた。

先日、子供の腕が脱臼した際に「出くわしてしまった」超ヤブ医者が、日赤医療センターの整形外科にいる話しを書いたが、そのことを近所のお医者さんにも説明し、そんな医師の風上にも置けない若造ではなく、脊椎治療等で有名な名医の方を紹介してもらった。当然だが、この件で僕は、かなり立腹している。

さて、日赤医療センターでレントゲンを撮ってもらったところ、骨���は異常がなかったが、内臓疾患の可能性もあるということで(針の先生がそう言っていた)、血液検査をして帰ってきた。

ところで、今日は「トレジャーファクトリー」の上場記念パーティに招待されていたのだが、さすがに出席を断念せざるを得ず、安田に、僕の代理として出席してもらうよう、彼のスケジュールを調整してもらった。

社長の野坂さん(人格的にとても素晴らしい方である)とは、ETICを通じて知り合い、かれこれ10年ぐらいの付き合いなので、とても残念だったが仕方ない・・・。きっと盛会だったことだろう。

さて、日赤医療センターに行く前、近所の病院の診察室で紹介状を書いてもらうのを待ちつつ横になっていた時、横で診察を受けていた「中高年(年齢が判らないので)の女性」の話し声が聞こえてきた。

小さな病院なので、広い診察室の横にカーテンで仕切られたスペースがあり、そこにベッドが置いてある。お腹を診てもらう際に横になったり、そこで点滴を受けたりするのだが、診察してもらっている患者さんとお医者さんの会話が聞こえて来る。厳密に言えば、プライバシーの問題がなきにしもあらずだが、とてもアットホームな病院であり、殆どがシリアスな病気の患者さんではないので、問題はないだろう(笑)。

さて、その中高年の女性だが、知的水準も経済水準も高く、教養溢れる方だということが、会話の内容から推察された。紹介状を書いてもらい、ベッドから下りて、その方の顔を拝見すると、思ったほど華やかな感じの方ではなかったが、やはり、とても上品な方だった。最初に彼女の声を聞いた時は、若い女性かと思ったほどのステキな声の持主だった。

さて、僕は彼女とお医者さんとの会話を聞きながら、こういうところにこそ、社会の実態を知る「貴重な機会」があり、生活感を知る機会があると感じた。「恵比寿」という地域柄、患者さんの属性は、経済的にも知的水準においても、そこそこの人が多いが、その事実を「数字」というデータではなく、リアリティとして知ることができる。

前刀さんがアップルコンピュータ(現アップル)の日本代表をされていた頃、「いちいち市場調査をしているより、電車に乗って、その車両の中にどれだけiPodを持っている人がいるか?とか、そういう���とを自分の目と肌で感じることの方が大切だし、そもそも速いよ」と言っていたことを思い出した。

松任谷由実が、ファミレスでカップルたちの会話を聴きつつ、作曲のヒントを得ているという話しがあったが、まさしく、そういうことだろう。そのことを実感した。

付き添いで一緒に日赤医療センターに行ってもらった妻とお昼を食べながらその話をすると、彼女の研究領域である「臨床心理」の世界では、患者ひとりひとりと向き合うため、統計的データだけでは何ともならなず、まずは定性的な情報ありきで、それを「理論」として検証するために、定量的データを取るということだそうだ。彼女は、今朝は子供の付き添いで、昼前からは僕の付き添いで、帰宅した頃にはぐったりとしていた。無理も無い。

インタースコープの頃の仕事(インターネットリサーチ)も、自分が使ったこともない商品の質問設計やデータ分析をしても、そこから得られる知見は大したものはないと思っていたが、そのことを改めて実感した。

「股関節」を痛めたことのない人にその痛みは分からないし、子供がいない人に、子供がいる生活はイメージ(理解)できないだろう。

前FRB議長のアラン・グリーンスパンも、複数の企業の社外取締役をしていた経験が「経済分析に役に立った」と自身の著書で語っていたが、やはり、何事も「リアリティ」が大切である。

経営コンサルタントとして有能な人が、実際の経営ができるかと言えば、そうではないのは当然である。

「あなたの暮らし向きは向上していると感じていますか?」という質問に、5段階評価で答えてもらった結果を分析しているだけでは、世の中の実態は見えてこないし、本当の意味で有益な調査結果は得られない。

そんなことを考えた一日だった。