故野村監督のような卓越した分析能力があるわけでもなく、落合博満氏のような類まれな才能と自分自身の判断に対する絶対的な自信と図太い神経があるわけでもなく、僕には大した才能はない。
こうして、わざわざ文字にするまでもなく、僕ぐらいの起業家はどこにでもいる。Exceptional でも何でもない。Just an ordinary person だ。
でも、野村監督はこう言った。
「人間の本当の勝負は、『実は自分には大した素質があるわけではない』と気づいたところから始まる。凡人は素質だけでは勝負できない。必ず壁にぶち当たる。苦労をする。だからこそ己が生きる道を必死で考え、変わることができるのである」。
ところで、Infarm Japan の経営は大変だ・・・。
「野菜」を作っているという意味では「農業」かもしれないが、事業構造、収益構造、コスト構造は、どこからどうみても「製造業」である。
やってみて、よく分かった。
僕は取材を受けたり、新しいお客さんや提携先になるかもしれない方々や面接でお会いする皆さんに「Teslaの野菜版、野菜版のTeslaのようなものです」と説明している。
Infarmは、最新のテクノロジーを使っており、ドラッカーが言うところの「新しい知識に基づくイノベーション」だ。
「新しい知識に基づくイノベーション」には、以下の3つが必要だ。
分析:いかなる要因が「欠落」しているか?(足りないものは何か?)
戦略:システム全体 v.s. 市場のみ v.s. 重点を占拠する。そのいずれの戦略を取るのか?
マネジメント:財務についての先見性と市場志向。資金はどれだけ必要か?市場のニーズは何か?
そして、新しい知識に基づくイノベーションを行おうとする者にとっては、「時間が敵」だ。
新規参入が可能な「開放期」は短い。チャンスは二度と来ない。
また、「整理期」は必ず来る。それは避けられない。しかし、規模の大きさは成功を保証しない。
「新しい知識によるイノベーション」は、イノベーションそのものが変化を起こす。「ニーズを創造する」ことを目的とする。
しかし、顧客が受入れてくれるか、無関心のままいるか、抵抗するかを事前に知ることはできない。定量調査は意味がない。概念として人々の間に認識されていなければ、言葉にし、定量的にカウントすることができないからだ。大事なのは「顧客の声」を聞くことであり、定性的な分析だ。
起業家としての戦略は、何らかの意味において「トップの座」を狙うものでなければならない。さもなければ、競争相手に機会を与えるだけに終わる。
僕はサンブリッジ グローバル ベンチャーズという国内外のスタートアップに投資したり、アクセラレーションプログラムを運営する会社を、2012年から2017年6月まで経営していた。
2012年にTeslaモデルSが発売された頃、シリコンバレーでも、Teslaは疎らだったが、それから3–4年が過ぎた頃からだろうか、現地に行く度に、駐車場に停めてあるクルマに占めるTeslaの比率が目に見えて増えて行った。
充電ステーション、航続走行距離(バッテリーの性能向上)、世の中の環境意識の高まり等、Tesla が普及するために必要不可欠だが「欠けていた要素」が、時間と共に解決されて行った。
問題は「欠けているピースが揃う」までに、どの程度の「時間」が必要なのか?は、誰にも分からない、ということだ。時間が長ければ長いほど、その間を乗り切る資金が必要になる。
Infarm の経営には、変数が多い。僕が今までやっていたネットビジネスやスタートアップへの投資事業と較べると、半端なく変数が多い。
僕は起業家としての先見性、投資家としての着眼点には自信がある。
但し、来年で還暦を迎える人間にとって、Infarm の経営には、尋常ではない数の「履修科目」がある。
今までの僕は、八方美人で、周囲との軋轢を避け、嫌われることを極度に嫌っていた。でも、もうそれは止めることにした。僕には、もう躊躇している時間はない。
お前に何が出来るんだ!と言われようが、バカにされようが、嫌われようが、僕はドン・キホーテのように挑み続ける。
実は、僕が腹を括る覚悟をしたのは、某同業他社の創業経営者とお会いしたことがきっかけだった。
表敬訪問に訪れた僕を快く迎え入れてくれ、会社の事業構造を説明し、物凄い規模の生産施設を自ら案内して下さった。
その方の話を聞き、生産施設を拝見し、初めて、自分たちが挑もうとしていること、やろうとしている事業の本質を理解した。
自分たちが戦っているゲームのルールを理解していないことこそが、最大のリスクだ。
来年から「還暦少年」だ! 文句あるか!!!
That’s the only way I can and the way I can keep being myself.