第05回 伊佐山 元氏 vol.2 (1)
2016-05-14ベンチャーキャピタリストの仕事。
DCMパートナーの方のひと言で伊佐山さんは、シリコンバレーの著名VCでの人生をスタートする。
しかし、その時の彼は、ベンチャーキャピタルという仕事にはまったく興味がなかった。
自分は起業する側だと思っていたし、お金を出す(投資する)というのは、銀行時代のお金を貸す立場と同じで、ある意味、「気楽でいいな(笑)」と思っていたが、リスクを取らないし、それでいて、いつも偉いのは変だと考えていたらしい。
「起業する人が一番大変で褒められるべきなのに」と、興銀出身にも関わらず、彼は「ファイナンスの仕事に多少、違和感を覚えていた」そうである。
もちろん、ベンチャーキャピタリストの仕事には、財務の知識・スキルは必要だが、それは「四則演算」の世界で済むレベルであり、それ以上に必要なスキルは、むしろ、良い人を結びつけて、投資先の社外取締役として、どこまで良い活動をできるか?良いコーポレートガバナンスを構築できるか?社長の良き相談役として、事業の支援をできるか?という、経営の仕事そのものだという。
そんなことで、5年ちょっとした頃から「これは結構、おもしろいな」と思うようになったと話していた。
シリコンバレーのサンドヒルにあるDCMのオフィスにて。
左から、DCM伊佐山さん、取材に同席された西尾さん(京都女子大学・准教授)、五十嵐さん(九州大学・教授)、田路さん(法政大学・教授)
一方、上記の話と矛盾するようだが、プレイヤーはあくまでも「起業家」であり、投資家というのは脇役に過ぎず、「グラス・ハーフ・エンプティ(コップ半分しかない)」と思ったこともあるそうだ。
しかし、また逆の話になるが、自分が起業家だったら「ひとつ」しかできないことを、10個も20個も手掛けられるというのは、違う意味でおもしろいとも思っている。
将来、自分が会社を興すことがあった時に、キャピタリストとしての経験は必ず生きてくるという意味においても、今の仕事におもしろみを感じていると話してくれた。
但し、この仕事を続けていくためには、当然のことながら、投資家としてリターンを出さなくてはならず、そんなに簡単ではない。とてもシビアな世界である。
「これだけIPOの件数が少ないと、何千もあるファンドのうち、7割くらいは消えるはずです。では、我々がどうやってトップ25パーセントに入り続けるかどうかというと、これはやはり日々アイデアを絞って、いかに自分の世界観と先見性を持って投資しているか、いかに良い人を引き付けられるかということに尽きるのではないかと思います」。