第06回 保坂 高広氏 vol.2 (4)
2016-05-14人生の「波」を見逃すな。
僕は保坂氏の話を聞きながら、彼の人間性や「精神的な強さ」は、生来のものなのか?それとも、本人の努力による後天的なものなのか?それを知りたいと思っていた。
「やっぱり、プロボクサーになったというのが、一番大きな自信ですよね」。
「死に物狂いで何かに打ち込むって、そんなにめったに経験することじゃないと思います。大橋会長ももちろんですが、元東洋チャンピオンのトレーナーの松本好二さんは、ものすごく人間的に素晴らしい人なんです。就職した後なんですけれど、『試合、やるか?』と言われ「やります、やります」と言っていたんです。でも、仕事が忙しく残業が多くなって、『やっぱりちょっと試合は・・・』みたいなことを言っちゃって、会長が『あいつはダメだな』と言っていたみたいなんですよね。松本さんの『今、ホセ(ジムでのニックネーム)はでっかい波を逃したんだよ・・・』というひと言と、『人生はサーフィンと一緒で、来た波に乗るか乗らないかで、その後が大きく異なる。ボクシングだけじゃなくて、今後の人生でもそういう波を逃しちゃうよ。せっかくそういう波が来たんだから、それに乗らないとダメだよ』という言葉が、すごく印象に残りました」。
僕は、「それで、試合には出なかったんですか?」と質問した。
「結局、出なかったです。僕の代わりに出たヤツを応援しに行ったら、1ラウンドKO勝ちしちゃって、『出ておけばよかったな』と言っている自分が、また情けなくて、『やんねぇで、言うんじゃねえよ』と、自分で自分に言っていました。『人生は波だ。海だ』という松本さんのあの言葉が今でも忘れられませんし、最近はつくづくそれを感じます」。
お父さんが創業された会社(運送関連の事業)のトラックの前で。
人間性が一番。
彼の話を聞いて、トレーナーの松本さんという方に興味が沸き、その方のご経歴を伺ったところ、東洋チャンピオンだった時に、「世界タイトル戦(テレビ放映もされたのだろう)」に「4回」も「挑戦」し、でも、結局はすべて負けてしまい、引退したという。
そんな凄い生き方をしている方と出会えたということは、とても幸せですよね?と言ったところ、彼はこう答えてくれた。
「大きいですね。やっぱりそういうところでも『人間性が一番』だなと思いましたね。いくら稼いでいるかじゃないなと・・・。人間として、そういう『経験』をしてきた人じゃないと分からないことが、やっぱりたくさんあるので・・・」。
次回は、環境ビジネスに取り組む、RAULの江田さんをご紹介します。
文章・写真: 株式会社ドリームビジョン 平石郁生